2012 Fiscal Year Annual Research Report
レアメタルの高効率分離を目的にした分子設計指針に基づいたイオン液体分離系の構築
Project/Area Number |
12J05560
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
馬場 雄三 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | レアメタル回収 / イオン液体 / 溶媒抽出 / 新規抽出剤 / コバルト / リサイクル |
Research Abstract |
本研究は、環境調和型の溶媒として、近年様々な分野において研究がされ、抽出操作への応用も期待されている"イオン液体"を抽出媒体とした高度なレアメタル分離系を構築することを目的として展開するために、イオン液体への溶解性が高く、優れた金属分離性能を有する抽出剤、もしくはそれ自身が溶媒となり抽出剤ともなる多機能性イオン液体を調製し、抽出能の評価を行うことを目的とする。 本年度は、従来の有機溶媒およびイオン液体双方に優れた溶解性を有し、従来の抽出剤では見られない特異な金属抽出能および金属選択性を発現する抽出剤の開発を目指した。配位に関連する構造としてハードな配位子であるカルボン酸とよりソフトな配位子であるアミン構造を導入した新規の抽出剤N-[N,N-di(2-ethylhexyl)aminocarbonylethyl]glycineを合成し、各種金属に対する選択性を検討した。様々な金属の抽出能評価を行った結果、本抽出剤特異的な傾向が示唆された。特に、コバルト(CO^<2+>)とマンガン(Mn^<2+>)の分離に優れた性能を有していることを発見した。今回、注目したコバルトおよびマンガンは、マンガン乾電池やリチウム二次電池等電池類からのリサイクルが期待されているが、これら電池類には、コバルトに対してマンガンが大過剰の割合で含まれており、従来の工業用抽出剤では高効率な分離回収が非常に困難であることが課題であった。 今回合成した抽出剤D2EHAGを用いることで、従来、単独の抽出剤では抽出分離が非常に困難であったCO^<2+>とMn^<2+>の優れた分離が可能であることを明らかにした。また、有機相中に抽出した金属を1mol/L硫酸で容易に逆抽出(回収)できることを確認している。以上の成果により、イオン液体抽出系、有機溶媒抽出系双方において、将来的な実用化が期待される新たなレアメタル分離抽出剤の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の工業用抽出剤において分離が困難である、マンガン共存溶液からのコバルトの分離回収が可能な、優れた新規抽出剤を開発することができ、また、本抽出剤はイオン液体抽出系においても利用可能であった。しかしながら、抽出溶媒にイオン液体を用いることによって、抽出分離能が向上するといった、イオン液体抽出系ならではの特性の発現には未だ至っていない。今後、イオン液体を抽出溶媒として用いる利点を発現可能な抽出剤を設計していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに新規に合成した抽出剤を、イオン液体含浸液膜やポリマー化したイオン液体に含ませることによって、膜分離や固相抽出といった、実プロセスとして優れた系に応用可能であるかを検討していく。これまでに、優れた分離能、特異的な選択性を有する抽出剤の開発に成功しているため、それをいかに実プロセスに適応可能であるかを検討していく必要がある。また、イオン液体抽出系が有機溶媒抽出系と比較して優れた系となるよう、今後ともイオン液体、抽出剤双方の分子設計を検討していく。
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