2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05611
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒井 達彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細孔性錯体 / 単結晶X線構造解析 / 分子認識 |
Research Abstract |
これまでの研究において、"分子認識力"が付与された細孔性錯体を合成しており、この性質を活かせば結晶内にて目的の分子の精密な配置ができると考えられ、空間に精密に配置されたゲストを用いて巨大分子を選択的な合成を目指し研究を行った。 その過程で結晶内にて分子の精密な配置ができていることを確かめるために、ゲスト分子が包接された結晶のX線構造解析が必要となるが、この単結晶X線構造解析の最適化の過程で大きな成果が得られた。 そもそも、単結晶X線構造解析は分子の構造を直接観測することができるために、構造決定の手法として非常に強力である。しかしながら、いくら測定・解析が発達しても単結晶X線構造解析を行うためには時間と運の必要な試料の結晶化という過程が必要であり、単結晶X線構造解析のボトルネックとなっていた。 私が研究してきている細孔性錯体結晶は溶液化学にて長年研究されてきた分子認識力を持っており、結晶内にゲスト分子を強く認識し、包接することを報告している。そのために分子は結晶内で規則正しく周期的に配列し、そのためにゲスト分子のX線構造が得られている。そこでゲスト分子の結晶化をせずにそのX線構造が得られるという挙動を結晶でない化合物、今回は常温液体の化合物に応用した。 細孔性錯体の結晶を一粒とゲスト分子を一滴用意し、結晶を液体のゲスト分子に浸し、室温で二日間静置しゲスト分子を結晶内に包接した。その後、そのゲスト分子包接結晶に対して単結晶X線構造解析を行った。ゲスト分子として芳香環を持ち、分子認識されやすいと考えられるジフェニルメタンと芳香環を持たないシクロヘキサノンについて行った。その結果ゲスト分子が結晶内に規則正しく配列しているX線構造が得られ、確かに結晶化することなく常温液体の化合物であっても、単結晶X線構造解析に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細孔性錯体結晶中での精密な反応場のためには、単結晶X線構造解析によって結晶内にゲスト分子がどのような状態で包接されているかを観測する必要がある。これまでの研究によって、ゲストを包接した細孔性錯体結晶の単結晶X線構造解析の例が増え、様々なゲスト分子に対応できるようになってきているため、本研究について順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、細孔性錯体結晶中へ包接されたゲスト分子を単結晶X線構造解析にて観測することができ、様々なゲストに応用できるようになってきた。そこで次に、錯体中に取り込んで位置・配向を制御して錯体中で反応させるためにゲスト分子を分子モデリングなどで見積もり、ゲスト分子を設計する。そして設計したゲスト分子を合成し実際に細孔性錯体結晶に包接させる。結晶へのゲスト分子の包接を元素分析、熱重量分析、結晶からのゲスト分子の抽出などを行って確認する。錯体中での位置・配向の制御のもと包接されたゲスト分子の錯体内での反応を行う。反応はゲスト分子包接結晶に熱をかけたり、光を照射したり、また他の基質を導入することによって行う。反応が進行したことを、ゲスト分子を錯体に取り込んだまま透過型顕微IR測定、単結晶X線構造解析で解析する。
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Research Products
(4 results)