2013 Fiscal Year Annual Research Report
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12J05611
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒井 達彦 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 単結晶X線構造解析 / 細孔性錯体 / キラル化合物 |
Research Abstract |
昨年度においては、単結晶場での巨大分子を選択的な合成を目指し研究を行い、結晶内にて目的の分子が狙った位置に存在することを確かめるべく、単結晶X線構造解析の条件の最適化を行う過程で、結晶中に包接された分子は結晶化の過程を経ることなくX線構造が得られていることに着目し、この現象を常温液体の化合物に応用した。本年度はさらにこの結晶化を経ずにX線構造が得られる手法(結晶スポンジ法)をキラル化合物の絶対構造解析に応用した。すなわちキラル部位を骨格に組み込むことで初めからキラルな骨格を持つ結晶スポンジを新規に合成し、その新規キラル結晶スポンジを用いてゲスト分子の絶対構造解析を行った。 トリフェニレンの2位にキラルなジオキソラン官能基がついたトリフェニレン誘導体を合成し、カートリッジ存在化でトリ(4-ピリジル)トリアジンとヨウ化亜鉛の錯形成によって新規キラル結晶スポンジを収率29%で合成した。そのキラル結晶スポンジの構造はX線結晶構造解析により明らかとなり、ゲスト分子を包接することが可能な細孔を持ち、トリフェニレン誘導体が骨格に組み込まれた構造であった。 次にこの合成したキラル結晶スポンジへのキラルなゲスト分子の包接、及び結晶スポンジ法を用いてゲスト分子のX線構造を得て絶対構造決定を行った。キラル結晶スポンジとゲスト分子としてエナンチオピュアな(-)-メントン50μLをバイアル瓶に入れ室温で1週間静置させることでゲスト分子の包接を行った。その包接結晶のX線構造解析を行ったところ、キラル結晶スポンジの細孔中にゲスト分子のメントンの構造を観測することができた。また、骨格に組み込まれたキラルなカートリッジの絶対構造が既知であることから、相対的にゲスト分子の絶対構造を1R, 4Sであると決定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細孔性錯体結晶中での精密な反応場のためには、単結晶X線構造解析によって結晶内にゲスト分子がどのような状態で包接されているかを観測する必要がある。これまでの研究によって、ホスト錯体の種類、ゲストを包接した細孔性錯体結晶の単結晶X線構造解析の例が増え、特に今回キラルな化合物にも応用が広がったことから、本研究について順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、細孔性錯体結晶中へ包接されたゲスト分子を単結晶X線構造解析にて観測することができ、様々なゲストに応用でき、特にキラルな化合物にも対応できるようになった。そこで次に、結晶中に包接したゲスト分子を位置・配向を制御するためにゲスト分子をモデリングなどで見積もり、ゲスト分子を設計する。次に実際にゲスト分子を合成し細孔性錯体結晶に包接させる。ゲスト分子の包接を元素分析、結晶からのゲスト分子の抽出などを行って確認する。錯体中での位置・配向の制御のもとゲスト分子の錯体内での反応を行う。反応が進行したことを、ゲスト分子を錯体に取り込んだまま顕微IR測定、単結晶X線構造解析で解析する。
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Research Products
(5 results)