2012 Fiscal Year Annual Research Report
部分因子環の平面代数を用いた、結び目と3次元多様体の不変量の研究
Project/Area Number |
12J05708
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡崎 建太 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Turaev-Viro-Ocneanu不変量 / 状態和不変量 / 平面代数 / 部分因子環 / 線型スケイン |
Research Abstract |
状態和不変量とは、単体分割を用いて定義される3次元多様体の不変量であり、TuraevとViroによりまず量子群に由来した不変量が定義され、Ocneanuによって部分因子環に由来した不変量へと一般化された。 部分因子環に由来する状態和不変量の不変性は理論的には保証されているものの、個々の具体的な部分因子環に対してその計算のためのデータを構成できるわけではなく、一般に具体的な計算は困難である。和久井と鈴木は泉のデータをもとにE_6型部分因子環の状態和不変量についての計算を行なっている。 本研究の1年目は、次の二つが目標であった。 (1)例外型部分因子環の平面代数を組み合わせ的に再構成し、その性質について初等的な証明を与えること。 (2)例外型部分因子環に由来する状態和不変量を組み合わせ的、初等的に再定義すること。 私はE_6型の部分因子環に対応する線型スケインの理論を構築し、さまざまな性質を組み合わせ的に示すことによって(1)を遂行した。証明はBigelowによって構成された既存の関係式を改良することによって為された。 また、E_6型部分因子環の単純射影に相当する平面代数の元を構成し、フユージョン則代数を決定し、それを用いて6j-記号の値を全て求めることによって(2)を遂行した。さらに、いくつかの具体的なレンズ空間に対して、その状態和不変量の値を再計算した。 和久井と鈴木の不変量の構成では、単体分割された3次元多様体の頂点集合にいったん全順序をつける必要があったが、私の構成ではそのような全順序をつける必要はなく、6j記号の一覧もより対称性の高いものをとることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、E_6型の部分因子環に対応する線型スケインの理論を完全な形で構成することができ、それに由来した状態和不変量も部分因子環知識を使わず組み合わせ的に構成することができたから。 また、レンズ空間に関してはL(p,1)の値を平面グラフの議論で再計算することができ、同様の手法がより一般の3次元多様体に対しても用いることが十分に期待できるから。
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Strategy for Future Research Activity |
E_8型、さらにはより高いindexを持つ部分因子環に対して上述の結果と同様の手法を用いて、線型スケイン理論と状態和不変量の初等的構成をしようと思っている。この際に困難となるのは、線型スケインの定義の複雑さである(indexが高くなるほど、対応する平面代数もより複雑になる)。E_8型に関しての線型スケイン理論はすでにかなりのところまで自分の研究が進んでいるので、これを完成させ、論文として投稿する予定である。 またレンズ空間L(p,q)のE_6型状態和不変量の値に関して、和久井はある種の周期性を部分的に見出している。具体的にはL(p,q)とL(p+12,q)の不変量の値が等しいことをq=1,2,3の計算結果から観測している。そこで私は、E_6型平面代数に関するある種の周期性を示すことで、その系として先述の周期性のqが一般の場合の証明を与えたい。これはレンズ空間L(P,1)に対しては成功しており、和久井の方法よりもより本質的な理解が得られることが期待される。
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