2013 Fiscal Year Annual Research Report
首都圏における地震動と広帯域地下構造モデルに関する研究
Project/Area Number |
12J05744
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
武村 俊介 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 長周期地震動 / 関東平野 / 短周期地震動 / 短波長速度不均質 / フィリピン海プレート / 海洋性地殻 / コーダ波 |
Research Abstract |
首都圏における低周波数から高周波数までの広帯域地震動伝播特性の解明および地下構造モデルの高精度化のため、観測地震動の解析と数値シミュレーションを行った。 盆地堆積層内での高周波数地震動の伝播特性解明のため、Coda波を用いた構造の推定を行い、国内会議にて推定結果を発表した。しかし、より浅部の地盤増幅率との分離が難しく手法の改良が必要であることがわかった。 首都圏で観測される地震動を詳細に解析していると、千葉県北西部下20-30㎞程度の深さを通過した地震動のみ、紡錘形をした崩れた波形となることがわかった。数値シミュレーションによる検討で、紡錘形の波形は千葉県北西部下20-30㎞程度の深さの低速度異常での強い地震波散乱によるものであることがわかった。強い地震波散乱により地震波の振幅も大きく減衰し、防災上も重要であることが明らかとなった。また、この低速度異常は、既往の研究によりフィリピン海プレートの沈み込みに伴う流体が関与していることが示唆されており、流体の移動と不均質構造の生成に関する研究が重要であることも示唆された。 海洋プレートの最上部にある海洋性地殻によって流体が深部へ供給されていることから、フィリピン海プレートの海洋性地殻を伝播するトラップ波の解析を行った。解析の結果、深さ30-40㎞程度で海洋性地殻の物性が大きく変化していることを明らかにした。この成果は、地震活動、地球内部での流体の移動、それに伴う化学変化などの研究に大きなインパクトを与えると考えられる。 また、大型建造物の被害に重要な長周期地震動についても、中深層観測井でのVSP調査の結果から作成した構造モデルで、盆地端における長周期地震動の励起およびその伝播を再現することに成功した。このことより、長周期地震動の励起と伝播には2㎞以深の深部構造ではなく、浅部速度不均質が大きく関与していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
首都圏の地震動の強度に重要な首都圏下の減衰構造に関して大きな知見が得られた。また、首都圏下の不均一な減衰構造の分布とその成因について、多用な視点から明らかにすることができた。このことは、首都圏での強震動予測だけでなく、地球内部での流体の移動や化学変化などを研究する研究者にも大きな影響を与える発見であった。また、長周期地震動に特化した速度構造モデルの構築法についても大きな進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
首都圏下の地震活動や地震動の減衰を知る上で、沈み込みに伴う流体の移動を知ることは非常に重要である。そこで、海洋性地殻を伝わるトラップ波の解析を通して、海洋性地殻内の構造の深さ変化や地震動伝播に与える影響を詳細に調査する。 また、浅部の堆積層内の速度構造も地震動の増幅に大きく影響することから、堆積層内のS波速度構造モデルの精緻化に務める。 上記、2点を解決し、首都圏下の地下構造モデル高精度化する。
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Research Products
(9 results)