2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05771
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
朝魯孟格日勒 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 清朝 / 外モンゴル / 牧地紛争 / 紛争処理 / 盟旗制度 / 境界画定 / 発生形態 / 遊牧民の慣習 |
Research Abstract |
本研究は清代(1636-1911年)モンゴルにおける牧地紛争および牧地利用を対象とする。本年度は、主に2013年に実施した史料調査で収集したモンゴル国の国立中央文書館と国立中央図書館所蔵の公文書や地図などを用い、清代道光26(1846)年から同治5(1866)年にかけて外モンゴルのトシェート・ハン部内におけるトシェート・ハン旗と左翼後旗との間で実際に発生していた旗レベルの牧地紛争の事例を、紛争処理の側面から詳細に考察し、清朝の対モンゴル統治策の一環となる盟や旗の境界画定の経緯を検討した。また、乾隆末期から19世紀にかけて外モンゴルの中部二盟であるトシェート・ハン部とサイン・ノヤン部の諸牧地紛争の事例を取り上げ、紛争の具体的な発生形態とそれに対する処罰の状況などを考察した。その成果は以下の三点からなる。 一、トシェート・ハン部のトシェート・ハン旗と左翼後旗との牧地紛争は、道光26年に始まり、20年後の同治5年の牧地境界画定によって解決され、この時決定された両旗の境界が清末やその後のボグド・ハーン政権期(1911-1921年)まで存続していたと確認できる。このように、先行研究では見られなかったケーススタディーとしての牧地紛争の実証研究を行い、清代外モンゴルにおける牧地紛争の実態の一部分を明かした。また、清代外モンゴルで発生していた牧地紛争の事例に関する歴史公文書が日本語に転写・公開されたことは、日本とモンゴルの文化・学術交流の促進に貢献できる重要な意味を有している。 二、清朝の盟や旗の境界画定政策は、盟や旗間の牧地紛争が終息していく過程で徐々に外モンゴルへ浸透・定着していったと考えられる。この政策がモンゴルの伝統的な遊牧生活に適合しないものであったため、旗の境界画定事業に時間がかかり、同治5年という清朝末期に差し掛かるまで、最終的な境界がなかなか画定できなかったと考えられる。つまり、盟旗制度の持つ限界も本牧地紛争からわかるであろう。 三、清代外モンゴル地域で頻発していた牧地紛争の発生形態は主に2種類であり、その1種はモンゴル遊牧社会において古くから伝わってきた游牧民特有の慣習であったと考えちれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、モンゴル国立中央文書館が一時閉鎖されていたことにより、中国領内の内モンゴル自治区にある内モンゴル文書館とオルドス市文書館で史料調査を行い、研究課題に関する歴史史料を数多く入手した。そして、今までに収集した歴史史料を用いて、研究発表を1件行ったことに加え、執筆した2報の論文が学術雑誌に掲載される予定となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2013年11月をもって再開されたモンゴル国立中央文書館で再度史料調査を実施し、清代外モンゴルにおける旗内の平民とイフシャビ(外モンゴル最高の活仏であるジェブツンダンバ・ホトクトの隷属民)との紛争のような行政上の境界線が全く存在しない牧地紛争の実例などに関する史料を収集し、論文を執筆して学術雑誌に投稿する。そして、これまでに収集できた清朝支配下の内・外モンゴルの全域で発生していた牧地紛争の実例などを、紛争処理などの側面から詳細に比較検討し、博士論文を執筆する。
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Research Products
(4 results)