2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦争の法則:シミュレーション技法による統計的法則性の再現と国際関係理論の転回
Project/Area Number |
12J05785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 岳 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際関係論・国際政治学 / 武力紛争の統計的法則性 / 武力紛争の計量分析 / シミュレーション技法 |
Research Abstract |
本研究計画は,(1)経験的なデータセットの検討(法則性の吟味)と(2)それを説明するモデル(特にコンピュータ・シミュレーション[マルチエージェント・シミュレーション]・モデル〉の提示およびその方法論的意義の検討を2つの柱としている.(1)については,武力紛争の(a)時間的な動態(データセットに見られる時間的な変動・傾向など)と(b)空間的な動態(紛争発生地点の分布など)の2つの側面について検討を進める. 平成24年度は,上記(a)時間的な動態の検討と,経験的に看取される法則性とその変動を説明するシミュレーション・モデルの作成を中心に研究を進めた.「リチャードソンの法則再訪:戦争規模の法則性とその理論的含意」において(1)・(2)の初歩的成果を報告し,最終的な成果を2本の論文としてまとめた(本報告書執筆時点ではともに査読中). (1)については,国家間戦争の規模と頻度との間に,時代を問わず一定の関係性(ベキ乗分布)が看取されること,およびフランス革命前後に分布のパラメータに変化が生じたことを説明するモデルを作成した.この法則性とその変動は既存モデルでは十分説明できなかったことに加え,提示したモデルの振舞いは戦争の生起・拡大を巡る理論一般や,多くの計量分析が置く仮定の経験的妥当性にも示唆を与える.(2)コンピュータ・シミュレーションを用いたモデリングについても,国際関係論における研究の進展が一部の研究者にしか理解されておらずまたその方法論的意義がこれまで十分に検討されてこなかったことに着目し,こうした論点をカバーするレビュー論文を執筆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には,上述の通り研究計画全体の半分程度の作業を完了することができた.武力紛争の統計的法則性と方法論(シミュレーション技法)についての2論文が年度内の刊行に間に合わなかったことが課題だが,こうした成果を具体的な論文としてまとめることができたことから,研究はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は,24年度中に発表が間に合わなかった国家間の交戦関係の法則性についての成果の発表し,武力紛争の《時間的動態》についての作業を完了することに加え,これまで研究対象とできていないデータセット(戦争・内戦・戦闘等の空間的分布)の検討とそれに基づくシミュレーション・モデルを提示し,武力紛争の《空間的動態》についての研究を進める.また,こうした作業から得た知見を最終的な成果として統合する.
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Research Products
(1 results)