Research Abstract |
平成24年度は,20H年東北地方太平洋沖地震津波の被災地を対象とし,(1)津波被害予測式の構築(津波被害関数),(2)航空写真の画像解析による建物マッピング技術の開発,(3)TerraSAR-X衛星画像による津波被災地の建物被害推計技術の開発の3つの技術課題に取り組んだ. (1)津波被害予測式の構築(津波被害関数)では,現地調査により得られた津波の浸水深の空間分布と,航空写真の目視判読により得られた流失建物の空間分布をGIS上で統合分析し,宮城県沿岸部の各行政区毎に,津波の浸水深と建物被害率の関係を津波被害関数という形で明らかにした.緊急災害対応時,これらの津波被害関数とリアルタイム数値解析により得られた浸水深の空間分布を掛け合わせ,建物の輪郭データとGIS上で統合分析することにより即時被害予測を行うことが可能となる.また,これらの津波被害関数は,各地域の建物の津波に対する脆弱性を示しており,具体的に危険な地域の線引きを行うことも可能であるという点において防災計画立案の際にも貢献するものと考えられる. (2)航空写真の画像解析による建物マッピング技術の開発では,デジカメの顔認識機能にも使用されているアダブーストという機械学習アルゴリズムを応用し,津波被災地を捉えた航空写真による建物自動抽出技術の検討を行った。まだ検討すべき課題は残るものの,影と屋根の輪郭に特徴を持つ建物については比較的良好に抽出されることが確認されており,今後被災前後の画像の変化抽出により津波被災地の建物被害を即時推計する技術に発展することが期待される, (3)TerraSAR-X衛星画像による津波被災地の建物被害推計技術の開発では,被災前後の高分解能合成開口レーダ衛星画像(TerraSAR-X)に機械学習アルゴリズムを適用することにより,流失率の大きい地域を半自動推定するモデルについて検討を行った.合成開口レーダによる解析は複雑であるものの,昼夜・天候に関わらず使用可能であり,緊急災害対応時に被害把握を行う上で本モデルの大きく貢献することが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
暗初予定していた(1)2011東北地方太平洋沖地震津波における津波被害予測式(津波被害関数)の構築と(2)衛星画像・航空写真の画像解析による建物マッピング技術の開発は順調に進めることができ,さらに,光学衛星画像の解析よりも高度な技術を必要とする(3)高分解能合成開口レーダ(TerraSAR-X)による津波被災地の建物被害推計技術の開発にも着手することができた.以上の理由により,当初の計画以上に進展したものと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
まず津波被災前後の衛星画像・航空写真による建物被害推計技術の検証を十分に行い,本技術の高精度化と汎用性の向上を図る,そして,さらに災害救援活動に強い技術へ発展させていくため,現在手動で行っている部分を全自動化し,より迅速に被害把握を行えるようにモデルの改善を図る.その一方,津波被災直後に衛星画像を取得できなかった場合を想定し,津波被害関数と津波数値解析,建物位置データに基づく建物被害予測手法の検証を行う.これらの検証を十分に行った上で,最後に衛星画像による建物被害推計技術と津波数値解析技術を融合させることにより,建物被害推計アルゴリズムの高度化を図る.
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