2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05853
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 奈緒香 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近藤格子 / 走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(i)バルク由来の複雑なバンド構造を持たない単純な低次元近藤格子(磁気秩序系、無秩序系)を作成し、(ii)それらのフェルミ準位近傍の電子状態、および空間分布の観察を走査トンネル顕微鏡法・分光法およびその他の補完的な方法を用いて達成し、磁気秩序系、無秩序系およびそれらの境界の量子状態を明らかにすることを目的としていた。 研究計画制定時、我々は金(111)表面上に形成された鉄フタロシアニン分子格子内で、分子スピン間に相互作用が働いていることを見出していた。研究開始後は系の量子状態を探るため、走査トンネル分光スペクトルとその磁場応答の測定を行ってきた。前年度までに、基板面内方向の磁場を印加した状態で測定を行い、分子中心で測定したスペクトル形状が磁場に応答すること、磁気応答には異方性があること、また、磁場応答には二種類あり、隣り合う分子は異なる磁場応答を示すことを見出していた。 本年度は、同じ系に対して基板垂直方向に磁場を印加したときの磁場応答の計測と、これまでに得られた実験結果の解析および理論モデルとの比較を行った。基板垂直方向に磁場を印加したとき、スペクトル形状の発展は全ての分子で同様であり、隣接分子間に差は見られなかった。面内磁場に対する磁気応答の異方性を合わせて考慮すると、系は外部磁場が基板面内の一方向に平行な磁場成分を持つとき、2種類のスペクトルを示すことが分かった。 得られた実験結果を説明できる量子状態として、系が零磁場下でイジング性の反強磁性秩序を形成した状態を提案した。また、スペクトル形状が有効磁場の絶対値を反映していると考えると、スペクトルの磁場応答を単純なイジングモデルと分子場近似を用いたシミュレーションにより再現できることを示した。 このように、当初の目的のうち、磁気秩序を持つ近藤格子系の創成とその量子状態の解明に関して、大きな進展があった。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(7 results)