2012 Fiscal Year Annual Research Report
基質石灰化のメカニズムにおける組織化学・微細構造学的アプローチ
Project/Area Number |
12J05865
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 智香 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 石灰化 / 血管石灰化 / 基質小胞 / TNAP |
Research Abstract |
研究代表者は、基質石灰化のメカニズム解明を目的とし、2つのテーマ(1)type II collagen promoterにTNAP遺伝子を組み込んだ軟骨細胞特異的トランスジェニックマウスに認められる基質石灰化の解析、(2)メンケベルク型動脈硬化に付随する血管石灰化の病理メカニズム解明、に基づく研究を実施した。 TNAP Tgマウスに関して、胎生18日齢大腿骨における微細構造学的解析を行ったところ、軟骨基質の石灰化は認められず、むしろ、肥大化軟骨細胞の石灰化が抑制されていた。TNAP Tgマウスの肥大化軟骨細胞層ならびに一次骨梁では、石灰化を抑制するPPiの生成酵素であるENPP1の過剰産生が認められ、同領域の石灰化結晶は、野生型と比較して微細で幼弱なものであった。これより、単にTNAPを過剰発現させても石灰化亢進は認められず、正常な石灰化には基質小胞や石灰化関連因子などが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 また、血管石灰化を生じるklotho遺伝子変異(k1/k1)マウスを用いた微細構造学的検索を行った。すると、k1/k1マウス大動脈中膜で著しい石灰化物を認め、同部位の血管平滑筋細胞は骨芽細胞のいくつかの性質を有する細胞へと変化していた。また、石灰化領域を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、基質小胞様構造物が石灰化結晶を成長させてゆく像ならびに、有機性構造物に石灰化物が沈着している像を認めた。これより、klotho欠損環境で生じる石灰化は、骨基質石灰化と類似した生物学的石灰化と、病理学的石灰化の2種類の機序で起こる可能性が考えられた。さらに石灰化が進行した領域では、TRAP/cathepsinK陽性の破骨細胞様細胞や、FGF23陽性の骨細胞に類似した細胞が観察された。これより、k1/k1マウスでは、血管平滑筋細胞が骨芽細胞へtransdifferentiationし、血管石灰化や、さらには血管骨化をも誘導する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
軟骨細胞特異的TNAP Tgマウスの検索から、基質石灰化において、TNAPは重要な役割を担うものの、TNAP単独で石灰化を誘導するわけではなく、基質小胞やその他石灰化誘導因子の存在が重要であることが示唆された。 よって、2年次に予定していた骨芽細胞特異的TNAP Tgマウスの作製を1年次に先駆けて行い、基質小胞存在下でのTNAPと石灰化の関連について組織化学的に解析を進めている。また、kl/klマウスにおける検索では、これまで血管石灰化が生じることが報告されてきたが、血管骨化についてはほとんど報告がなされていない。周囲に先駆けて、血管骨化における組織化学的解析を行っており、当初の計画以上に、研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
TNAP Tgマウスについては、骨芽細胞特異的TNAPTgマウスの大腿骨および脛骨において脱灰・未脱灰標本を作製し、組織化学的・微細構造学的に検索を行う。基質小胞存在下でTNAPが過剰産生した場合に石灰化が亢進するのか、また石灰化に関与する因子の発現がどのように変化するのか遺伝子解析も合わせて検討する予定である。 血管石灰化については、血管骨化の組織化学的検索を進める予定である。また、kl/klマウスにおける血管石灰化はklotho/FGF系の破綻が原因と考えられている。Klotho/FGF系の主軸を担うαklothoが欠損したマウスの大動脈を解析することで、血管石灰化の病理機序ならびにklotho/FGF系の役割について解明を進めていきたい。
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Research Products
(14 results)