2012 Fiscal Year Annual Research Report
縦断データ解析における潜在変化得点モデルの応用と方法論的問題の検討.
Project/Area Number |
12J05868
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宇佐美 慧 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 潜在変化得点モデル / 潜在曲線モデル / 縦断データ / サンプルサイズ / 混合モデル / 情報量規準 / 高齢者 / ベイズ法 |
Research Abstract |
〈研究1:縦断的な実験研究におけるサンプルサイズ決定〉 本研究では,モデル表現としての一般性の高い潜在変化得点モデルの中でも,特に利用頻度の高い潜在曲線モデル(階層線形モデルとも言えるもの)を利用する状況にまず注目して,一定の精度で実験効果を検出するために必要なサンプルサイズ決定法の簡便法を提案し,成果を国際誌へ投稿した.〈研究2:潜在変化得点混合モデルにおける潜在クラス数推定〉 一般に,混合モデルと言う手法を通して,例えば潜在クラス数が2の場合では,データの背後にある2種類の縦断的な変化パタンを抽出できる.真のクラス数を統計的に推定する際には一般に多くの困難を伴うが,多くの場合情報量規準と呼ばれる一連の指標群を利用することが経験的に有効であるとされている.ところが,どのような文脈の場合においてどの指標が優れているかなど,情報量規準のパフォーマンスの詳細についてはまだ十分に検証されているとは言えない.本研究では各種の指標の推定精度の比較検討を網羅的なシミュレーション実験を通して行い,国際誌への投稿を行った.〈研究3:モデル開発研究と応用事例の報告〉 最後に,データの正規性など,社会科学のデータでは非現実的な仮定を必要とせずに高い精度で変化パタンを推定できる,統計学的に柔軟なモデルの開発についての研究は,他の有効と考え得る方法論への探求(特にベイジアン・ブートストラップ)を行ったことから遂行は途中段階である.しかし,研究3の応用事例として報告予定であった,全国高齢者縦断調査データを用いた応用研究については,ベイズ法と呼ばれる推定法を(潜在変化得点モデルを含む)一連の潜在曲線モデルと併用して本データに適用した応用・解説論文を行動計量学会誌にて発表することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載のとおり,本研究課題は,潜在変化得点モデルの方法論的課題に関する3つのテーマ(研究1研究3)から構成されており,本年度ではこれらを並列して遂行する予定であった.研究1研究2については既に論文化し投稿中であり,研究3の応用研究についても研究成果が既に国内誌にて掲載されている.全体として,当初の研究予定以外の周辺的な部分についても多くの進展が見られており,総合的には期待以上の研究の進展があったと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究3の進捗と共に,ベイジアンブートストラップを潜在変化得点モデルに応用した事例研究,ならびに当初の研究計画で挙げていた(例えば研究1に関わる潜在変化得点モデルに特化したサンプルサイズ決定方法)研究など多面的に進めていく予定である.特に,来年度は潜在変化得点モデルの提案者であるMcArdle教授の下(南カリフォルニア大学)で研究を進めていく予定であり,当初の研究計画の遂行は勿論,その周辺に関する様々な研究課題についてもより探求することができると考えられる.
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Research Products
(12 results)