2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子の光活性化を経る二酸化炭素固定化反応の開発
Project/Area Number |
12J05885
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島本 康宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 二酸化炭素 / 太陽光 / アミノケトン / Yang反応 |
Research Abstract |
二酸化炭素を炭素源として活用することは、資源・環境問題が顕在化している現在極めて重要な課題である。従来、熱力学的に安定な二酸化炭素との反応にはGrinard反応剤などが用いられてきたが、これらを合成するには多大なエネルギーを必要とするため、結果的に多量の二酸化炭素を放出するという矛盾をはらんでいた。本研究では無尽蔵なエネルギー源である太陽光エネルギーを用いて二酸化炭素を有機化合物と反応させる手法を開発することを目的としている。具体的な実験内容は以下の通りである。2-(トシルメチルアミノ)アセトフェノンのジメチルアセトアミド溶液に対して太陽光を照射したところ、Yang反応が進行し、91%収率で四員環化合物であるアゼチジノールへと変換された。次に、単離したアゼチジノールを1気圧の二酸化炭素雰囲気下、炭酸セシウムとともに加熱撹拌したところ、五員環カルボナートへと93%収率で変換された。この反応は対応する五員環化合物であるピロリジノールでは全く反応が進行しなかったことから、光反応で生じた四員環の歪エネルギーが駆動力となっていることが分かる。 この一連の反応は同一のフラスコ内で行うことが可能であり、2-(トシルメチルアミノ)アセトフェノンと二酸化炭素からアゼチジノールを一旦単離することなく直接環状カルボナートを83%収率で得ることにも成功した。以上のように、太陽光を駆動力とした2-(トシルメチルアミノ)アセトフェノンと二酸化炭素との反応を開発することに成功し、その成果を論文としてまとめ、ドイツ化学協会誌のAngewandte Chemie International Editionに投稿、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の目的であった基本コンセプトの実証を達成でき、論文投稿も達成した。研究の評価も高く、雑誌の表紙に採用されるとともに、HotPaperに選ばれたことから、十分に意義のある研究成果を出すことが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は計画を変更し、ロジウムの1,5転位を経由するN-アレーンスルホニルアゼチジノールのベンゾスルタムへの骨格再構築反応について検討する予定である。本反応は昨年度に偶然見出したものであるが、1,5金属転位の報告例が極めて少なく、その条件、合成化学への応用を検討することは学術的に非常に重要であると考えている。本研究が終了次第、残りの期間で本来の研究計画である光反応を利用した二酸化炭素固定化反応を検討する。
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Research Products
(4 results)