2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05908
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇治 広隆 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヘリックスペプチド / 単一分子測定 / 電子移動 / ダイポールモーメント |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究においては、ヘリックスペプチドの持つ高い電子移動能を単一分子レベルで測定し、ヘリックスペプチドのマクロダイポールモーメントの電子移動における影響を解明した。 STMブレークジャンクション法による単一分子測定の結果から、ダイポールの向きと電子移動の向きが同じ場合のコンダクタンスは1.92nSと、ダイポールの向きと電子移動の向きが反対の場合のコンダクタンスは1.54nSと求まった。また、電圧-電流測定の結果からもヘリックスペプチドを介した電子移動にダイポールの向きによる依存性があることが分かった。共に、ダイポールの向きと電子移動の向きが平行である時のほうが、約20%電流がより流れている結果であった。これらの結果から、ヘリックスペプチドのマクロダイポールモーメントが電子移動を促進していると推察できる。 これらの実験結果から得られた考えをより詳細に検討するために、Gaussian 03プログラムを用いた、b31yp/6-31G+(d,p)レベルでの密度凡関数法による第一原理計算を行った。この計算により、外部電場を印加すると、ヘリックスペプチドの最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道 (LUMO)を代表とする分子軌道のエネルギー準位が変化することが分かった。また、被占軌道はダイポールの影響を受けるため、ペプチドのC端側では準位が上がり、N端側では準位が下がり、分子内の占有軌道に傾きが生じることが分かった。この二つの要因が重なることにより、電子カップリングに非対称性が生まれ、ヘリックスペプチドを介した電子移動にダイポール依存性が生じたことが確認された。 本研究では、ヘリックスペプチドを介した電子移動のダイポールの影響を単一分子測定を用いて定量的に求め、第一原理計算を用いてその機構について明らかにした点で画期的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、8量体のヘリックスペプチド単一分子の電気的特性を解析することを達成し、その研究成果については英国における権威あるジャーナルに掲載されるに至った。ヘリックスペプチドの持つ高い電子移動能を単一分子レベルで解明し、生体内で起こる電子移動現象を司る機能性タンパク質複合体を模倣とした新規分子デバイスに必要な基礎的知見である電気化学的物性を明らかにする、という研究目的において一定の進展が見られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、当該年度の研究成果をさらに発展させ、ヘリックスペプチド単一分子の電子移動における鎖長とダイポールの影響について明らかにすべく、現在継続して研究を行っている。さらに、異なる分子設計における電子移動反応についても明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)