2013 Fiscal Year Annual Research Report
国内避難民保護をめぐる規範の発展・動態に関する研究
Project/Area Number |
12J05961
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
赤星 聖 神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国内避難民(IDP) / 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) / 国連人道問題調整事務所(OCHA) / 難民(保護) / クラスター制度 / 「国内強制移動に関する指導原則」 / 規範 / 国際機関の自立性 |
Research Abstract |
採用第2年度は、国内避難民(IDP)保護規範の動態を、1、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による規範形成メカニズム ; 2、「国内強制移動に関する指導原則」の形成過程 ; 3、国連人道問題調整事務所(OCHA)の成立過程とその役割、という3つの観点から分析を試みた。 1、UNHCRによる規範形成メカニズム : 米国国立公文醐での資料調査の分析を現在進めている最中である。UNHCRによるIDP支援への関与の初期の事例として挙げることができるベトナム戦争時には、同機関が有する1951年難民条約の解釈権限、すなわち「誰が難民か」を決定する権限を用いて、ベトナム戦争によるIDPについては支援を拒絶した。一方で、スーダン内戦(1960年代)によるIDP問題については、難民保護との明確な関連性があったため、IDP支援を行うことを決めた。 2、「国内強制移動に関する指導原則」の形成過程 : 先行研究でも指摘される通り、前国連事務総長特別代表を中心とする法律家専門集団が大きな役割を果たした。 3、OCHAの成立過程とその役割 : 当初の研究予定には明示的には含めていなかったが、冷戦終結後、支援を行うアクターが多様化し、機関間調整が効率的・効果的なIDP支援に不可欠な要素となったこともあり、研究に着手し論文にまとめた(『国連研究』所収論文)。1990年代以降長らく、体系的なIDP支援システムが形成されることはなかったが、そのシステム形成を阻む方向性で、国家はもちろん、国津諸機関が自立したアクターとして重要な役割を果たしていることが明らかになった。 先行研究の多くは、IDP支援の制度的記述、また法的評価にとどまっていた。しかし本研究は、UNHCRやOCHAといった国際機関を独立したアクターとみなし、単なる保護の実施機関ではなく、国家とともにIDP保護規範を形成していくとした政治的な側面に着目した点が特徴的である。加えて、理論的には非国家主体(特に、国連機関)の行動原理、また国際政治における役割・意義を明らかにできる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第1、2年度に行った海外での資料調査によって、おおむね必要かつ重要な資料をすでに収集できた。すでにいくつかの論考を雑誌論文また共著本にて発表(予定)であり、後は先般3月に行った調査で収集した資料を分析し、成果としてまとめる段階に既に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
前項にて記載した通り、資料収集はおおむね終了したため、資料の分析と成果のまとめという段階に入りつつある。次年度(最終年度)は、1、資料調査の分析を引き続き進め、来年度中の査読付雑誌への投稿を目指す ; 2、研究全体を一貫して説明する分析モデルを構築する ; 3、修士論文の成果を含むこれまでの研究成果全体を統合したIDP研究に関する政治的分析を行った研究書の執筆を行う、という3点を軸とする。現在までの資料調査で不十分な点が見つかれば、追加的に海外調査を行うこともありうるが、基本的には執筆に注力する。具体的には、資料分析とともに、理論モデル構築のため、国際関係論や隣接分野から理論的文献を収集し、分析を行う。
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Research Products
(9 results)