2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期依存的な新規ERα複合体の同定及び機能解析
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12J05985
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陳 淑チン 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 前立腺癌 / アンドロゲン受容体 / 生化学 / ユビキチン |
Research Abstract |
本研究では、ヒトの前立腺がんの細胞を用いて、アンドロゲン受容体複合体構成因子群の精製とアンドロゲン受容体の遺伝子調節機構の解明を目的として研究を行ってきた。具体的には3つのアプローチで研究を進めた。 一つ目は、生化学的手法であるアンドロゲン受容体の抗体カラムを用いて、22Rv1というヒトの前立腺がん細胞において、内在性のアンドロゲン受容体複合体構成因子群の精製を行い、質量分析装置であるLC_MS/MSを用いて内在性のアンドロゲン受容体複合体構成因子群網羅的同定を行うことができた。二つ目は、同定した因子群の中に今まで報告されない新たなアンドロゲン受容体相互作用因子である脱ユビキチン化酵素USP7に着目し、免疫沈降を行うことで、USP7はアンドロゲン受容体との結合がリガント依存的なことを確認することができた。これによって、USP7は、アンドロゲン受容体の新規相互作用因子であることがわかった。三つ目は、USP7はアンドロゲン受容体のターゲット遺伝子発現の制御に関与することが証明した。まずは、USP7ノックダウンにより、全体のアンドロゲン受容体ターゲット遺伝子に与える影響をRNA-seqで調べた。この結果、PSAやFKBP5などの代表的ターゲット遺伝子を含めて、約15%のアンドロゲン依存的な調節する遺伝子の発現量は抑制された。さらに、USP7は、ヒトの前立腺がん細胞におけるアンドロゲン依存的な細胞増殖に関与することを示した。 以上により、USP7はヒト前立腺がん細胞において、アンドロゲン受容体ターゲット遺伝子発現に関わっている、新規アンドロゲン受容体相互作用因子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では前立腺がん細胞を用いアンドロゲン受容体複合体の精製系を確立し、既知の転写共役因子群に加え、これまでに未報告であるアンドロゲン受容体新規相互作用因子の同定に成功した。また、この新規作用因子の一つである脱ユビキチン化酵素USP7がアンドロゲン受容体とリガンド依存な結合し、標的遺伝子のエンハンサーに局在することを証明した。さらに、USP7が前立腺がん細胞においてアンドロゲン受容体標的遺伝子発現の制御に関与することを示した。以上により十分進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、USP7によるアンドロゲン受容体標的遺伝子発現制御の分子メカニズムの解析を行っていく。具体的には前立腺癌細胞におけるUSP7のノックダウンによって、アンドロゲン受容体と標的遺伝子のエヘンサーの局在変動をCHIP-qPCRにより検討する。また、USP7のノックダウンと過剰発現により、in vivo ubiquitination assayを行い、細胞内におけるアンドロゲン受容体のユビキチン化状態を調べる事で、アンドロゲン受容体はUSP7の基質であるか否かを検討する。また、このような脱ユビキチン化修飾はアンドロゲン受容体タンパクの分解や細胞内の局在に関与するか否かを検討する。さらに、USP7の脱ユビキチン活性化変異体を作製し、これを用いてアンドロゲン受容体タンパクのユビキチン化修飾と標的遺伝子の発現の変動を調べ、アンドロゲン受容体標的遺伝子発現制御の分子機構を明らかにしていきたい。
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