2013 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病の脳内神経原線維変化をインビボで可視化する分子プローブの開発
Project/Area Number |
12J06027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 憲志 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Alzheimer's Disease / Neurofibrillary tanles / Tau / Imaging / benzoimidazopyrimidine |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)脳内には、βアミロイドタンパク質(Aβ)を主成分とする老人斑(SP)と、タウタンパク質(tau)を主成分とする神経原線維変化(NFT)の蓄積が認められる。ADの確定診断は患者剖検脳組織における、これらの病理学的所見に委ねられているのが現状で、重篤な脳障害が生じる前の早期段階でADを診断することは困難となっている。よって、非侵襲的かつ信頼性と再現性に優れたpositron emission tomography (PET)およびsingle photon emission computed tomography (SPECT)を用いたSPおよびNFTの生体イメージングはADの早期診断にっながると考えられる。特にNFTの蓄積量はSPに比べて臨床症状と高い相関があることから、NFTの生体イメージングは、ADの早期診断に加え、臨床症状に相関した診断にも有効であると期待される。私はこれまでに、フェニルジアゼニルベンゾチアゾール(PDB)を母核としたSPECT用NFTイメージングプローブを設計・合成し、そのNFTへの高い結合親和性を見いだした。しかし、[^<125>I]標識PDB誘導体は正常マウス脳内において非特異的結合に由来する放射能滞留が認められた。これはPDB骨格の高い脂溶性が原因と考えられ、この脳内挙動を改善するため、PDB誘導体の脂溶性を下げる必要があった。そこで本研究では、より低い脂溶性を有するベンゾイミダゾールを母核としたベンゾイミダゾピリミジン(BIMP)誘導体を設計・合成し、そのNFTイメージングプロープとしての有用性について基礎的評価を行った。Aβ_<1.42>あるいはtau凝集体を用いた結合親和性実験において、BIMP-4はAβ_<1.42>に比べ、L76倍高いtau凝集体への結合親和性を示した。AD患者剖検脳組織切片を用いたARGにおける[<125>^I] BMP-4の放射能集積は、AT8による免疫染色の陽性部位と一致した。さらに、蛍光染色実験においてもBIMP-4はAD患者剖検脳組織切片上のNFTを明瞭に染色した。また、BIMP4のLogP値は2.48と算出され、PDB。3 (LogP=3.84)よりも低い脂溶性を有することが示された。マウス体内放射能分布実験より[^<125>I] BIMP-4は投与早期における脳移行性(投与2分後に0.92%ID/g)と速やかなクリアランス(投与60分後に0.30%ID/g)を示した。これは[^<125>I] PDB誘導体の正常マウス脳内における放射能滞留(投与2分後に0.94-1.03%ID/g、投与60分後に2.89-3.23%ID/g)を顕著に改善した結果であった。以上より、SBIM-4はAD脳内NFTイメージングプローブとして有効な基礎的性質を有することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究過程で合成・評価したBIMP誘導体は、AD患者脳組織切片上のNFTへの結合を維持していた。また、それまでに合成・評価していたPDB誘導体の問題点である、正常マウス脳内における放射能滞留を改善した結果となったことから、予定していた目標を達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において達成すべき項目のひとつとして、SPに対してNFTへの選択的結合親和性が高い候補化合物を見出すことが挙げられる。NFTへ選択的結合性を有する候補化合物を、より詳細に選定し、さらにTau過剰発現モデルマウスを用いたインビボ評価を行うことを今年度の最終目標とする。
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Research Products
(3 results)