2012 Fiscal Year Annual Research Report
炭化タングステン-コバルト系超硬合金における粒成長機構の解明および制御
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12J06087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 一生 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超硬合金 / WC-CO / サーメット / 透過型電子顕微鏡 / X線エネルギー分散分光 |
Research Abstract |
WC-Co系超硬合金は、高い機械特性を有することから切削、掘削、研削を始めとする各種工具用材料として工業的に広く用いられている。本合金は、焼結中には主にWC粒とCoを主成分とする液相から構成され、このうちWC粒の粒径によって機械特性が大きく変化することが知られている。WC粒の粒成長を阻害するため、これまで様々な添加物が添加されてきたが、本合金の機械特性を向上させる明確な指針は与えられていなかった。本研究では、焼結中のWC粒と液相との界面構造を明らかにすることにより、粒成長の具体的なメカニズムを明らかにし、効率的な材料設計指針を与えることを目的としている。特に粒成長抑制効果が大きなVCを添加した場合の粒成長抑制機構について、これまで焼結中のWC/液相界面に(W,V)Cxが存在して界面反応を抑制しているとする説と、Vが液相中での溶質拡散を抑制しているとする説とがあり、焼結中の粒成長を議論するにあたって障害となっていた。そこで本研究では、焼結中の試料を油中に落下させることで急冷を行い、焼結中の状態を凍結したうえで原子分解能の透過型電子顕微鏡観察とX線エネルギー分散分光によって焼結中の界面構造を明らかにした。その結果、速度的に急冷中には形成され得ない、(W,V)CxがWC粒中に侵入している構造が観察され、(W,V)Cxが焼結中にも存在していることが明らかになった。 以上の結果から、VCを添加したWC-Co超硬合金中wc粒の粒成長は界面反応律速により進むことが明らかになり、また、VCを添加した際に形成される(W,V)Cxなどの第3相とwc粒との格子定数差を適切に制御することにより、より効果的に粒成長を抑制できることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WC-Co系超硬合金の特性向上に向けた材料設計指針の提示という最終目的に対し、現在のところVCなどのWC/液相界面に第3相を形成することによって粒成長を抑制する添加物について、その粒成長抑制機構を明らかにすることに成功している。今後、試料凍結手法やその場観察手法を用いた粒成長機構の解明により、上記目標は十分に達成可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、数種類の添加物について、添加した材料における第3相の形態を、焼結時の状態を凍結した試料に対して3次元的な透過型電子顕微鏡観察、X線エネルギー分散分光による分析を組み合わせて明らかにしていく。また、粒成長が阻害されていない無添加の試料における、焼結時の状態を凍結した上での3次元的な透過型電子顕微鏡観察や、高温その場透過型電子顕微鏡観察による粒成長の直接的な観察などを組み合わせ、粒成長の機構を解明していく。以上の結果を組み合わせることにより、粒成長機構、粒成長抑制機構の統一的な理解を与えると共に、機械特性の大幅な向上に向けた、適切な材料設計指針を示す。
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Research Products
(8 results)