2012 Fiscal Year Annual Research Report
アクチン細胞骨格の力学-生化学連成機構の分子動力学的理解
Project/Area Number |
12J06099
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松下 慎二 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アクチンフィラメント / 連成剛性 / 熱ゆらぎ / 粗視化分子動力学 / 計算バイオメカニクス / 細胞メカニクス |
Research Abstract |
本研究では,アクチンフィラメントの分子構造ダイナミクスを解析することにより,力学-生化学的因子がアクチン細胞骨格の再構築機能に及ぼす影響を解明することを目的としている.粗視化・全原子分子動力学モデルを用いた数値シミュレーションを用いて,分子階層における力場変化とアクチンフィラメントの構造変化との関係を明らかにする.特に,アクチンフィラメントの構造変化がアクチン結合タンパク質の結合活性の変化に及ぼす影響を解明し,力学刺激が分子階層の生化学シグナルとして変換されるメカニズムを分子レベルから明らかにする.本年度は,申請書に記載した年次計画に対して,粗視化フィラメントモデルを構築し,アクチンフィラメントの力学挙動の解析を行った. まず,非格子型郷モデルに基づき,フィラメントのアミノ酸残基を一粒子に粗視化し,数マイクロメートル長の新たな粗視化フィラメントモデルを構築した.本非格子型郷モデルとして,受け入れ研究室により提案された粗視化分子動力学ソフトCafemol2.0を用いた.次に,張力やトルク等の力学作用が関与するアクチンダイナミクスを理解するため,フィラメントの引張-曲げ運動,曲げ-ねじり運動,および,ねじり-引張挙動を定量的に評価し,さらに,統計力学的手法を用いて,それらの連成剛性を評価した.本研究において評価された連成剛性をより粗視化したモデル,および,連続体モデルに組み込むことにより,ネットワーク構造や束構造等のより長大なスケールにおけるアクチンフィラメント構造の力学挙動を解明することが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,アクチンフィラメントの力学挙動について着目し,フィラメントの構造ゆらぎと力学的特性の関係に関して興味深い成果を上げている.さらに,本年度10月よりカリフォルニア大学サンタバーバラ校にて,生化学的因子がアクチン細胞骨格の力学挙動に及ぼす影響を理解するための実験を開始し,第2年度の研究計画に関する予備検討を進めている. 以上より,当初の年次計画の期待通りに研究が進捗していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
アクチンフィラメントのねじり挙動に依存するコフィリン,曲げ挙動に依存するArp2/3に着目し,アクチン-コフィリン複合体,および,アクチン-Arp2/3複合体のスタティックな分子構造を元に,アクチンフィラメントの非格子型郷モデルを構築する.それらを用いて,粗視化分子動力学シミュレーションを行い,統計物理学,非線形力学,ナノ構造力学の観点から分子構造ダイナミクスを明らかにする.具体的には,準安定状態や自由エネルギ地形における活性化エネルギの消失,振動モードの遷移や軌道不安定性について評価し,さらに,複合体内で力や結合相互作用を受け持つアミノ酸残基の推定を行う.また,推定されたアミノ酸残基がメカノセンサーとして働くことを検証するため,これらにin silicoでミューテーションを入れ,比較検討する.以上により,分子構造変化と結合定数とを関係付け,生化学シグナルの結合親和性を評価する.
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