2013 Fiscal Year Annual Research Report
アクチン細胞骨格の力学-生化学連成機構の分子動力学的理解
Project/Area Number |
12J06099
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松下 慎二 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 細胞骨格 / 分子動力学 / 神経細胞 / 熱ゆらぎ / 計算バイオメカニクス / 細胞メカニクス |
Research Abstract |
本研究では, 細胞骨格タンパク質の力学―生化学連成機構を分子動力学シミュレーションにより理解することを目的としている. 本年度は, 申請書に記載した年次計画に対して, イオン強度が神経細胞の軸索内フィラメントの構造・力学特性に及ぼす影響について, 分子動力学的アプローチによる検討を行った. 以下に, 本年度中の主な研究実施内容と, 得られた成果をまとめる. 1. 粗視化フィラメントモデルの構築 本研究では, 非格子型郷モデルに基づき, 神経細胞の軸索内フィラメントのアミノ酸残基を一粒子に粗視化し, 数マイクロメートル長の新たな粗視化フィラメントモデルを構築した. 本非格子型郷モデルとして, 受け入れ研究室により提案された粗視化分子動力学ソフトCafemo12.0を用いた. 2. 熱揺らぎによる分子構造ダイナミクスの評価 定温環境下におけるフィラメントの構造ゆらぎと力学特性の検討を行った. 軸索内フィラメントの分子挙動に着目し, 粗視化分子動力学法を用いた挙動解析を行った. 三種類の異なる長さを有する軸索内フィラメントの分子構造のゆらぎをそれぞれ定量的に評価した. その結果, 最も短いフィラメントが軸索内細胞骨格間の長さを決定していることが示唆された. 3. イオン濃度が分子構造ダイナミクスに及ぼす影響の評価 軸索内環境の主要な因子の一つであるイオン濃度に着目し, イオン濃度が軸索内フィラメントの分子構造ダイナミクスに及ぼす影響を評価した. その結果, 生体内環境下に比して低いイオン強度において, フィラメントが強く相互作用することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 異なる生化学状態の細胞骨格の力学挙動について着目し, フィラメントの構造ゆらぎに関して興味深い成果を上げた. さらに, カリフォルニア大学サンタバーバラ校にて, 軸索内構造を評価する実験を行い, シミュレーションの妥当性を検討した. 以上より, 当初の年次計画の期待通りに研究が進捗していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目, 2年目の研究に得られた知見を元に, 新たな数理モデルを構築し, 力学刺激・生化学シグナルを考慮した分子ダイナミクスを統一的に理解する. また, アクチンフィラメントの形態変化に関するマルチスケールバイオメカニクス的検討を加え, これらの分子メカニズムの工学的応用性について検討する.
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