2012 Fiscal Year Annual Research Report
個体応用を指向した新規レポータータンパク質システムの創製
Project/Area Number |
12J06101
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西原 達哉 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 動的核偏極 / 核磁気共鳴法 / レポータータンパク質 |
Research Abstract |
近年、緑色蛍光タンパク質に代表されるレポータータンパク質が開発され、培養細胞レベルにおけるタンパク質解析は飛躍的に進展した。一方、複雑系(個体)での機能は、ほとんど明らかにされていないのが現状である。これは個体レベルでのタンパク質機能を解析する技術の欠如が原因である。そこで、本研究では、個体内におけるタンパク質解析を可能にする技術開発を目標に設定した。本年度は、申請内容のMouse lactate dehydrogenase-X(mLDH-X)の改良を行った。既に、個体応用に向け、mLDH-Xが動的核偏極法を用いたレポータータンパク質として機能する可能性を見いだしている(T.Nishihara et al.Chem.Sci.,3, 800-806)。本年度は、新たに、多重共鳴NMR法をmLDH-Xのセンシングに応用することにより、mLDH-Xがレポータータンパク質として機能するかどうか検討した。その結果、動的核偏極法を用いた以前の報告では、至らなかった生細胞におけるタンパク質発現解析に成功し、非常に有意義な結果が得られた。なお、本結果に関しては、今後、国際誌に投稿予定である。 また、動的核偏極法を用いた新規レポータータンパク質として、β-galactosidaseが有力な候補となることも見いだした。本酵素は、細胞解析において汎用的に使われているレポータータンパク質である。さらに、超偏極寿命の長い^<15>N-ニトロフェノール部位を含むONPGも基質として認識し、酵素反応も非常に速やかに進行する。そのため、基質分子の超偏極寿命が短く、酵素反応速度が遅いといったmLDH-Xの問題点を克服しており、動的核偏極法を用いたレポータータンパク質しては、非常に優れていると考えられる。実際に、基質合成を行い、予備検討を行ったところ、レポータータンパク質を発現した細胞の破砕液中で、レポータータンパク質の検出に成功し、非常に良好な結果が得られた。そのため、次年度も引き続き、本酵素のレポーターとしての機能を実証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した通り、細胞におけるレポータータンパク質の解析及び、マウスを用いた予備検討等を進められている。また、申請内容のレポータータンパク質に加え、新規レポータータンパク質の探索も進めている。さらに、個体におけるタンパク質解析技術の拡充に向けて、体内に発現している内因性酵素を直接解析する手法の開発にも取り組み、良好な結果が得られているため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、個体応用をするにあたり、レポータータンパク質の基質分子の超偏極寿命と、レポータータンパク質の酵素反応速度との兼ね合いが重要となる。そのため、レポータータンパク質の発現量や、基質の動態に応じて、基質分子、及びレポータータンパク質双方の改良を行っていく必要がある。基質分子の改良としては、超偏極寿命の向上等の改善を行う必要がある。すでに、四級窒素の超偏極寿命は、非常に長いことが知られているため、そうした分子構造を基質分子に導入することで、超偏極寿命の向上が可能になると期待される。また、酵素に関しても、酵素改変による触媒能の向上や、その他のレポーター酵素を探索するなどの対応策を取れると考えられる。
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Research Products
(5 results)