2012 Fiscal Year Annual Research Report
横穴墓からみた古代国家成立期における集団関係の研究
Project/Area Number |
12J06114
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩橋 由季 九州大学, 比較社会文化学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 考古学 / 古代国家成立期 / 横穴墓 / 日本列島 / 情報伝播 / 情報の受容 / ネットワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、古代国家成立期に列島各地で築造された墓のひとつである横穴墓の形態・出土した副葬品・人骨の分析を通じて情報・もの・人間の移動を明らかにし、当該期の社会における集団間のネットワークとその形成の歴史的背景について解明することである。 この目的達成のために本年度は、横穴墓の形態と出土した副葬品の分析に的を絞り、主に1.東海地方と、2.東北地方東南部・関東地方東北部について検討を行った。具体的には、横穴墓の現地踏査に基づく遺跡の立地・遺構の形態等の観察・記録を行い、この成果と出版された発掘調査報告書を用いたデータベースの作成とこれに基づく分析を行った。 1の地域では、各地域の横穴墓にそれぞれ異なる形態が採用されていること、これが横穴墓導入時あるいはそれ以降の「影響」の多元性とその受容のされ方の多様性に起因することが明らかとなった。また、2については当該地域の横穴墓の展開の中で現れる多様な系譜のうちのひとつである「肥後型横穴墓」の出現の歴史的背景について検討を行った。その結果、各地域での「肥後型横穴墓」の採用のされ方には差異があり、これが築造時に得られた墓の構造に関する情報の程度や在地化の程度の差異に起因することを明らかにした。そしてこのような現象は、情報伝達のネットワークの多様性を表していること、特に後者のうち東北地方においては当該期の対蝦夷政策と関連した集団の移住や物流など、ヤマト政権による支配政策の一端を示しているということを考察した。このことは、文献資料のみでは明らかになってこなかった国家の周辺地域をどのように国家に取り込んでいったのかということを解明する上で重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1.発掘調査報告書を基にした分析対象資料のデータベースの作成、2.分析に用いる資料の実見、3.各地域における横穴墓の展開に関する分析を行う予定であった。1については、予定していた東海・関東地方と北陸地方の一部のデータベースを作成することができた。2についても同地域の現存する横穴墓遺跡について踏査を行い、資料の観察と写真記録を行うことができた。3については、東海地方における横穴墓の展開と東北地方南部・関東地方におけるいわゆる「肥後型横穴墓」の出現の歴史的背景について重点的に検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きデータの集成と資料調査・分析を行う。特に、列島の広域を視野に入れたマクロな分析と、各地域や各遺跡における横穴墓の展開というミクロな分析を並行して行い、各地域のパターンの抽出とモデル化を行う必要がある。これに加えて、人骨の歯牙エナメル質のストロンチウム同位体比分析による集団の移動に関する検討と、古代史学のデータの収集・考古学的モデルとの対比を予定通り行っていく方針である。
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Research Products
(1 results)