2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトとマウスにおける精巣特異的遺伝子の発現調節機構の比較解析
Project/Area Number |
12J06230
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栗原 美寿々 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヒト / マウス / 精巣 / 遺伝子発現調節 / long noncoding RNA / ヒストン修飾 |
Research Abstract |
本研究ではヒトとマウスにおいて精巣特異的なTCAM遺伝子の発現調節機構の解析を行っている。TCAM遺伝子は2種において精巣特異的でありながらその発現量に大きな差が存在し、マウスTcamがタンパク質をコードするのに対し、ヒトTCAMは偽遺伝化していた。そのため、TCAM遺伝子の発現調節機構を解明することで遺伝子発現調節の共通性や相違性を明らかにすることができる。本研究ではまず2種に共通したメカニズムとして種を超えて保存された非翻訳領域(CNS)について解析を行った。その結果、TCAM遺伝子座に存在した6つのCNS領域(上流からCNS1-6と名付けた)の内、CNS1とCNS2を含む領域からは精巣特異的long noncoding RNA(lncRNA)が発現していることをヒトとマウスの2種において発見した。このlncRNAのTcam発現への影響を調べるため、マウスlncRNAを細胞株に導入したところ、Tcamの発現は誘導されなかった。よってこのlncRNAはトランスに作用しないことが分かった。一方、他のCNS領域(CNS3-6)についてはマウス細胞株を用いたクロマチン構造解析の結果、クロマチン構造の緩んだ領域として検出された。 そこでCNS領域のヒストン修飾パターンの解析をマウス精巣生殖細胞を用いて行ったところ、転写活性化の指標となるヒストン修飾がlncRNA発現領域及びCNS3において高いレベルで検出された。このことからlncRNAの転写にヒストン修飾が関与していることや、クロマチン構造が緩んでいたCNS領域の内CNS3に精巣において転写因子が結合している可能性が高いことが判明した。本研究は遺伝子発現調節の保存性や相違性に注目した非常に独創的な研究でり、精巣特異的な新規のlncRNAを発見し、未解明なことが多いlncRNAの研究の発展に寄与する可能性がある重要な研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に基礎的なデータを集めることに力を注いだ。まず、ヒトとマウスに共通するメカニズムとして2種において保存された非翻訳配列を同定し、その中の2つからlong noncoding RNAがTCAM/Tcamと相関するかたちで(精巣の生殖細胞特異的に)発現することを明らかにした。また、CNS3と呼ばれる保存配列が、精巣の生殖細胞で特異的にはたらくエンハンサーである可能性も示した。これらのデータは研究の第一段階ではあるが、今後の解析には必須の非常に重要性の高いものである。2年目以降に実りある成果を出すためのしっかりとした基盤を築くことができたという点で、本研究は期待通りの進展を見せていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はlncRNAのTCAM発現への影響とCNS3に結合する転写因子の探索を行う。lncRNAの作用機構を調べるため、Tcamのプロモーターに対してシスに作用するかどうかを検証する。また、lncRNAの多くがタンパク質と相互作用して働くことから、今回発見したlncRNAと相互作用するタンパク質の同定を行う。一方CNS3に関してはゲルシフトアッセイを行い転写因子と結合する領域を絞り込み、ChIPアッセイによって結合する転写因子の同定を行う。
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Research Products
(2 results)