2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトとマウスにおける精巣特異的遺伝子の発現調節機構の比較解析
Project/Area Number |
12J06230
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栗原 美寿々 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヒト / マウス / 精巣 / 遺伝子発現調節 / Conserved Noncoding Sequence / エンハンサー / long noncodirlg RNA / プロモーター |
Research Abstract |
本研究はヒトとマウスにおいて精巣特異的遺伝子TCAM/Tcamの発現調節機構の解析を行うことで遺伝子発現調節の共通性や相違性を明らかにすることを目指している。TCAM/Tcam遺伝子は2種において精巣特異的でありながらその発現量に大きな差が存在し、マウスTcamがタンパク質をコードするのに対し、ヒトTCAMは偽遺伝子となっていた。本研究ではまず2種に共通したメカニズムを解明するため、種を超えて保存された非翻訳領域(CNS)について解析を行った。その結果、TCAM遺伝子座に存在した6つのCNS領域(上流からCNS1-6と名付けた)の内、ヒト及びマウスにおいてCNS1がエンハンサー活性を持つことがin vitroの解析により判明した。またこの配列はプロモーター活性も示し、マウスにおいてTcam-Smarcd2遺伝子間領域から転写される新規の精巣特異的long noncoding RNA (1ncRNA)のプロモーターとしても機能することが判明した。ヒトにおいてもCNS1周辺領域から複数の精巣特異的な1ncRNAが発現していたことから、CNS1はヒトでも1ncRNAのプロモーターとして機能している可能性が考えられた。本研究は哺乳類において1つの配列がプロモーターかつエンハンサーとして機能することを明らかにした初めて報告となる。新規のマウス精巣特異的lncRNAについては、GC-2spd (ts)細胞株を用いてlncRNAを恒常的に発現する細胞株を複数作製した結果、lncRNAがTcamの発現に関与している可能性は低いことが予想された。本研究は遺伝子発現調節の保存性や相違性に注目した非常に独創的な研究であり、多機能性ゲノム配列の同定や精巣特異的な新規の1ncRNAを発見した。遺伝子発現調節の複雑性を理解する上で大変意義のある研究と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はTCAM/Tcamの発現調節に直接関与する可能性のある配列としてCNS1を同定した。また、この配列がin vitroでエンハンサーかつプロモーターとしての活性を有することを発見し、哺乳類類において初めてエンハンサーかつプロモーターとして機能する配列の存在を明らかにした。さらにCNS1をプロモーターとする新規のマウス精巣特異的lncRNAに関しては、1ncRNAを恒常的に発現する細胞株を作製し、ターゲットを探索するための基盤を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCNS1に結合するタンパク質の同定、さらに新規のマウス精巣特異酌lneRNAのターゲットの探索を行う。CNS1配列は精巣においてエンハンサーかつプロモーターとして機能していることが予想されるため、複数のタンパク質が結合していることが考えらえる。そこで、まずCNS1の配列から結合するタンパク質を探索し、それが相互作用するタンパク質を探す。CNS1に結合する可能性のあるすべてのタンパク質についてChIPアッセイを行うことで、in vivoでCNS1に結合するタンパク質を同定する。マウス精巣特異的1ncRNAのターゲットの探索は、GC-2spd(ts)細胞株を用いて作成した恒常的1 ncRNA発現細胞株の中で1ncRNAの発現量に最も差のある細胞株を用いてトランスクリプトーム解析を行いターゲットの絞り込みを行う。
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Research Products
(2 results)