2012 Fiscal Year Annual Research Report
病原メカニズムの解明に基づく海産白点虫症対策の確立
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12J06422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
善家 孝介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | タンパク質分解酵素 / リン酸化酵素 / 海産白点虫 / ワクチン / テトラヒメナ / 寄生虫 |
Research Abstract |
今年度は病原メカニズムに関与する病原因子候補の特定と、実験に必要な技術の開発を目標とし、主に以下の3項目について研究を行った。 1.海産白点虫のクローン化:一般的に天然では海産白点虫は血清型として分類される複数の系統が混合した状態で存在しているが、現在研究室で保有している海産白点虫も3つの血清型が混合していることが判明した。そこで、虫体のクローン化を行い、3種の中で最も感染力が強いと考えれらる1系統を選別した。これにより遺伝的に均一な集団を材料に研究を進めることが可能となった。 2.病原因子の探索:海産白点虫の感染ステージに特異的に発現しているタンパク質分解酵素をzymographyにより特定し、各種クロマトグラフィの組み合わせにより該当酵素の精製を行った。アミノ酸配列の決定に必要な量を得るために現在も精製を継続中である。また、感染ステージにおいて発現量が非常に高いリン酸化酵素(PTPlb)を同定しており、これについてはcDNA配列のクローニングまで完了している。いずれの酵素も病原性に関与する可能性は高く、今後は遺伝子クローニングを完了し、リコンビナントタンパク質を作製し詳細な機能解析を行う予定である。 3.海産白点虫タンパク質の発現系:海産白点虫のリコンビナントタンパク質を効率的に作製するために、同じ繊毛虫類に属するテトラヒメナを用いた発現系の構築を試みた。発現ベクターの構築および、遺伝子導入の条件検討を行い、海産白点虫のタンパク質を効率的に発現させることができた。大腸菌発現系で繊毛虫タンパク質を発現させるには遺伝子の改変を行う必要があったため、このテトラヒメナ発現系の利用により、海産白点虫リコンビナントタンパク質の作製が容易となった。病原因子候補の機能解析に応用すると共に、大腸菌発現系により得られたリコンビナントタンパク質との抗原性の違い等も調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画表に基づき、タンパク質分解酵素の研究、および発現系に関する研究は順調に進行させることができたぶ、アポトーシス誘導に関する研究に着手することができなかった。しかしながら、これに変えて、リン酸化酵素に関する研究に着手しており、今年度の最終目標である、複数の病原因子候補を特定するという目標は達成されたため、おおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、病原因子候補とした2つの酵素の解析を、引き続き、重点的に推進する予定である。また、同時に、今年度はアポトーシス誘導に関する研究にも着手し、RNA干渉に関する技術開発も開始する。当初予定していた、SSH cDNAライブラリーの構築は、すでに2つの病原因子候補を特定しているため、予算を勘案し、場合によっては実施しない可能性もある。
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