2012 Fiscal Year Annual Research Report
特別支援学校・学級に通う発達障害生徒の自己物語構成-思春期に着目して-
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12J06432
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堤 英俊 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 特別支援学校・学級 / 発達障害 / 中学生 / ライフストーリー / 自己物語 |
Research Abstract |
本研究は、特別支援学校・学級に通う発達障害圏の中学生たちの自己アイデンティティの様相を明らかにすることを主要な目的としている。とりわけ、特別支援学校・学級という「特別な教育の場(通常の教育とは異なる場)」に居ることをめぐる発達障害圏の中学生たちの語る問題経験に着目して社会学的な観点から研究を行ってきた。 平成24年度は、中学校特別支援学級2校における5名の生徒(いずれも中3生)、特別支援学校中学部4校における5名の生徒(1名が中3生、4名が中2生)を対象とした調査的研究を行った。放課後(月2回)のライフストーリー・インタビューを調査の主軸に置きつつ、全ての学校において、教室での同級生や教員との相互行為場面の参与観察と、担任教師・保護者へのインタビューも実施した。また、基礎的研究として、特別支援学校・学級の歴史、とりわけ、知的障害特別支援学校(養護学校)と知的障害特別支援学級という場所をめぐるポリティカルな論争点の変遷に関する文献研究を行った。研究成果については学会大会での口頭・ポスター発表を通して公表してきた。具体的には、調査的研究では、質的データをもとに、「特別な教育の場」に居ることへの違和感の有無の社会・文化的文脈について検討し、基礎的研究では、近年の知的障害特別支援学校・学級をめぐる言説において「措置される場所」から「選択して進む場所」へという転換が起こっていることを示した。 特別支援学校・学級における質的調査から見えてきた仮説は、「特別な教育の場」に対する主観的意味づけが、自らの過去の通常学級体験からくる「通常な教育の場」観と相対的な関係にあること、そして「特別な教育の場」でしばしば目にする「障害」というワードに対する構えと距離の取り方と密接に関係していることであった。健常/障害をめぐる構造的ジレンマと彼(女)らの生活戦略との関係について考察することが次年度の目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究計画のとおりに進み、調査的研究、基礎的研究の両方が順調に進行している。とりわけ、計画時において多少の困難(研究協力校、協力生徒の確保)が想定された質的調査において、計画以上にデータの収集が進んだ。ただし、平成24年度に開始した調査がほとんどであったため、データの整理と分析の作業が間に合わず、年度内に公表できたデータはごく一部にとどまった。しかし、結果的には、データ収集が進行した分、次年度にデータの整理と分析の作業を精緻に行う余裕がうまれた。平成25年度には、未発表の調査結果をもとにした研究成果を学会等で報告し、論文化していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画のまま進める。平成24年度に中2生であった4名については、次年度も引き続き定期的な調査を実施する。しかし、次年度は、データの整理と分析、および論文化に意識的に時間を割く。基礎的研究については、文献の精査を通して、発達障害の概念をめぐる構造的ジレンマについての整理を行う。最終的に、調査的研究の成果と基礎的研究の成果を合わせて、総合的な研究として作品化する方向をさぐる。
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Research Products
(3 results)