2012 Fiscal Year Annual Research Report
テンサイOwen型細胞質雄性不稔性に働く新規花粉稔性回復遺伝子の研究
Project/Area Number |
12J06444
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本間 雄二朗 北海道大学, 大学院・農学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞質雄性不稔 / 稔性回復遺伝子 / テンサイ / 育種学 |
Research Abstract |
テンサイOwen型細胞質雄性不稔性(CMS)には複数の花粉稔性回復遺伝子(Rf)が関わる事は多くの研究者により指摘されてきたが,その遺伝子クローニングはRf1を除いてなされていない.Owen型CMSに対しRfとして採用される遺伝子が複数あるのならば,それはいかなる機能を持つ遺伝子であるのか,また,いかなる相互関係にあるのか興味深い.申請者はRf1とは異なる,花粉稔性回復に寄与する単一の遺伝因子を遺伝学的に同定しており,Rf2と命名している.テンサイOwen型CMSに対するRf2の分子的な実態を調査するため,どのような遺伝子をコードするのか明らかとし,その機能を解明することを目的としている.平成24年度は,まず,Rf2を保持するテンサイ個体から作成したBACライブラリを用いて,Rf2座の塩基配列の決定と,新規のDNAマーカーの作出を試みた.クロモソームウォーキングによりRf2座の30のBACクローンの整列化を行った.BACクローンは次世代シーケンス解析とサンガーシーケンス解析により塩基配列を決定し,およそ2Mbの塩基配列情報を得た.また,BACクローンの配列情報より,Rf2座に新たに14個のDNAマーカーを作出した.同時に,Rf2を分離する1,178個体から成る新規分離集団を用いて,RIE2領域の詳細な絞り込みを行った結果,Rf2座はおよそ1Mbの領域に絞り込まれた.多数の個体が現在育成中であるため,今後更なる絞り込みが期待される.1Mbの塩基配列は遺伝子予測プログラムに基づく解析や,塩基配列相同性解析を行い,候補領域内には既知の遺伝子と相同性を持つ遺伝子が49個予測された.この中にRf2が含まれている可能性が高い.現在,これらの遺伝子をはじめ,予測プログラムによって推定された遺伝子様配列は稔性回復個体の花で遺伝子発現しているかどうかをRT-PCR法により解析中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はRf2候補遺伝子の絞り込みまでを目的としていた.候補領域は遺伝距離からの推定よりも長い物理距離を有していたが,BACクローンの整列化を遅滞無く遂行することが出来た.また,遺伝学的な詳細な絞り込み解析にはテンサイの生育に必要とされる時間から1年弱はかかる事が予測されていた.以上を踏まえて,絞り込みが進行しつつ,塩基配列が決定されRf2座に位置する遺伝子群の特徴付けが進んでいる現状は,期待が持てる進捗状況であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,平成24年度より継続してRf2候補遺伝子の各組織での発現をRT-PCRにより調べる.同様に,遺伝学的な絞り込み解析も完遂する.また,多数のCMS系統や維持系統および稔性回復系統において塩基配列多型や構造多型を調査し,比較する.同時に,GFP融合コンストラクトを用いて細胞内での局在を解析する.これらの情報をもとに,候補遺伝子を絞り込み,テンサイCMS植物に遺伝子導入して形質転換体を評価を行う.また,RF2抗体を作成し,翻訳産物を解析する.これまで得られた特徴付けと併せて,Rf2が保持する稔性回復機能を明らかとし,Rf2との機能的な違いとその決定部位を推測する.可能であれば,Rf2とrf2のキメラコンストラクトを作成して,その確認を行う.
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Research Products
(5 results)