2013 Fiscal Year Annual Research Report
テンサイOwen型細胞質雄性不稔性に働く新規花粉稔性回復遺伝子の研究
Project/Area Number |
12J06444
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本間 雄二朗 北海道大学, 大学院農学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞質雄性不稔性 / 稔性回復遺伝子 / テンサイ / 育種学 |
Research Abstract |
テンサイOwen型細胞質雄性不稔性(CMS)には複数の花粉稔性回復遺伝子(Rf)が関わることは多くの研究者により指摘されてきたが、その遺伝子クローニングはRf1を除いてなされていない。Owen型CMSに対するRfが複数あるのならば、それはいかなる機能を持つ遺伝子であるのか、また、いかなる相互関係にあるのか興味深い。申請者はRf1とは異なる、花粉稔性回復に寄与する単一の遺伝因子を遺伝学的に同定しており、Rf2と命名している。テンサイOwen型CMSに対するRf2の分子的な実態を明らかとし、その機能および作用機序を解明することを目的としている。平成25年度は、まず、前年度作出した詳細マッピング用の分離集団の表現型を評価し、候補領域を狭めた。BACライブラリの補完のため、新規にfosmidライブラリを作成し、候補領域の物理地図を作製した。塩基配列を決定し400kbの配列が得られた。遺伝子予測プログラムと塩基配列相同性解析および発現解析により、17個の遺伝子が確認された。Rf2個体とrf2個体の葉と花芽より抽出したRNAを用いたRT-PCRによる発現比較で、ORF8と命名した遺伝子がRf2個体特異的に発現した。また、ORF8をGFPに結合してパーティクル・ボンバードメンド法によりネギ表皮細胞での細胞内局在を観察すると、ミトコンドリア局在であった。ORF8はRf2候補遺伝子として、上流2kbと下流1kbを含むゲノム断片としてバイナリーベクターに組み込み、アグロバクテリウム法によりCMSテンサイに形質転換した。また、ORF8をCMV35Sプロモーターに連結した強制発現コンストラクトを作成し、同様にCMSテンサイに導入した。現在、ORF8ゲノム断片を導入したCMSテンサイは相補性の検定のために育成中である。また、ORF8強制発現のCMSテンサイを用いて、その作用機序を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度はRf2候補遺伝子の形質転換テンサイの花粉稔性評価とそれを用いた作用機序の解析までを到達目標としていた。しかし、絞り込まれた候補領域が既存のBACライブラリで完全にカバーできない事が問題となった。この点に関して、新規にfosmidライブラリを構築する事で克服したが、計画と比べて進捗状況に差が出てしまった。一方で、Rf2個体とrf2個体での遺伝子発現比較やミトコンドリア局在の解析に基づき、候補遺伝子のクローニングに成功した。また、その形質転換テンサイの作成も進んでいる。以上を鑑みれば、計画方針の点では順調であると言え、今後の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
Rf2遺伝子の証明とその作用機序の解明およびRf2とrf2を識別するマーカーを作出することを最終年度の推進方策とする。Rf2の証明は形質転換テンサイの育成と花粉稔性の観察により確認する。Rf2候補遺伝子はRNA配列特異的に作用することが予測されるタンパク質であったが、これまでRf2個体でのCMS原因遺伝子の転写および翻訳レベルでの変化は検出されていない。作用機序の解明のため、Rf2候補遺伝子を強制発現させたCMSテンサイからミトコンドリアを抽出し、CMS原因遺伝子を含めたミトコンドリア遺伝子の発現プロファイルを調査する。また、翻訳産物の性状の確認も行う。これらの結果に基づき、Rf2とrf2の機能を決定する要素を推定する。また、rf2系統を含む多数のテンサイ系統を収集し、Rf2候補遺伝子の構造多型を比較する事で、Rf2とrf2を区別するDNAマーカーを作出する。
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Research Products
(6 results)