2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06463
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白田 理人 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 危機言語 / 調査言語学 / 琉球語 |
Research Abstract |
本年度は本研究の目的のうち、特に(1)琉球語喜界島上嘉鉄方言の言語ドキュメンテーション・アーカイビングを行いつつ参照文法を作成すること(2)喜界島内他方言の調査により、各方言について文法概略レベルの記述と方言間の対照を行い、喜界島方言の概観をその方言差の諸相も含めて明らかにすること、の2点に関わる研究活動を行った。 (1)・(2)について、9月上旬に喜界島に滞在し、上嘉鉄方言・小野津方言及び坂嶺集落の変種(以下坂嶺方言)について聞き取り調査及び自然談話の収録により、研究対象に関する一次データを収集した。(1)について、研究者がこれまでに行なっていた上嘉鉄方言の共時的体系(音韻・形態・統語)の概略的記述を基にして、上嘉鉄方言の自然談話の書き起こしと形態素ごとのグロス・日本語訳をまとめた自然談話資料を作成した。またロンドン大学SOAS'(東洋アフリカ研究学院)の言語学研究科に研究遂行目的で滞在し、言語ドキュメンテーション・言語アーカイビングのの技術と知識を学んだ。加えて、これまでに収集した喜界島方言に関する一次データ(音声・映像)の保管をより長期で確実なものにし、さらに将来的に話者コミュニティや他研究者とのデータの共有及びデータの公開を円滑にするために、データをELARにデポジットするための手続きを行った。(2)について、島内他変種のうち北部の小野津集落で話される変種(小野津方言)について、自然談話を書き起こしと形態素ごとのグロス・日本語訳にまとめ、補助的資料として小野津方言の簡易文法を付した自然談話資料を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SOASでの滞在により言語ドキュメンテーション・アーカイビングの知識と技能を学び、また喜界島での調査で一次データを収集し、上嘉鉄方言と小野津方言の談話資料を作成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
喜界島に長期滞在し、一次データの収集と分析を行う。上嘉鉄方言の参照文法作成に関連して、現地調査(聞き取り調査及び談話の収録)によるデータ収集・分析により、(形式面からではなく)機能面からの記述を進め、かつそれぞれの項目の記述をより詳細なものにしていく。言語アーカイビングの活動に関して、これまでに集めているデータも含めてデータを確認してメタデータの記述を詳細化する作業を行い、またその意義が認められるデータについては話者の同意を得た上で他研究者や話者コミュニティへの公開を行う。島内他方言の文法概略作成及び方言間の比較・対照研究のため、調査地点を増やして地域変種についてデータを集め、それぞれの変種の共時的体系(音韻・形態・統語)の概略的記述を行う。また、語彙及び音韻面・形態面の比較から、各方言間の歴史的関係について考察する。
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Research Products
(2 results)