2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06463
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白田 理人 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 喜界島方言 / 文法記述 / 談話資料作成 / 琉球語 |
Research Abstract |
まず、上嘉鉄方言文法記述の詳細化のため、聞き取り調査により、動詞、形容詞の形態論的、統語論的特徴にかかわるデータを収集し、成果発表を行った。喜界島島内他地域の記述に関して、まず、先行研究において北部諸方言の特徴とされてきた「中舌母音」に関して、聞き取り調査によるデータ収集及び分析を行い、従来「前舌母音」とされてきた母音と「中舌母音」とされてきた母音の音響音声学的差異は主として母音自体ではなく先行する子音と母音の渡りにあり、音韻論的にも母音音素を立てることなく解釈が可能であることを示した。また、北部の小野津方言の一人称代名詞複数の体系について、聞き取り調査によるデータ収集及び分析により、先行研究で同類的/異類的とされてきた2形式の区別が、基本的には、除外と包括の区別として説明できること、より正確には、後者は聞き手の全員を含むときに用いられ、前者は聞き手をまったく含まないか、あるいは聞き手の一部を含むときに用いられることを示した。さらに、これらに加え、文脈上重要な特定の3人称を含み、聞き手を含まない特殊な除外形の存在を新たに報告した。また、島内中央部の中間方言、坂嶺方言については、文法概略の執筆のため、語彙及び動詞形態論に関わるデータの収集を行った。小野津方言、中間方言、志戸桶方言、先山方言、佐手久方言について談話資料の収集及び書き起こしを行った。小野津方言についてはすでに収集していた談話資料の書き起こしの確認調査を行い、これを論集に載せるためのグロス・日本語訳付きの資料としてまとめた。また、島内方言の系統関係を論じる前提として、上嘉鉄方言と小野津方言の対応語形と規則的な音韻変化及びその他の方言差について発表を行った。さらに、沖縄久米島方言、奄美大島龍郷町浦方言・瀬戸内町請島方言・瀬戸内町与路島方言、西表島船浮方言についても現地調査に参加し、データ収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本件急の柱である喜界島上嘉鉄方言の文法記述の詳細化を行うことができ、他方現についても文法の概略記述を進め、特に類型論的に、あるいは他の琉球語所方言と比べて特徴的な点について発表し琉球語研究者など他の研究者からのフィードバックが得られ、また他の琉球語の変種についても複数個所でのデータ収拾を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究計画として上嘉鉄方言の参照文に関連して、すでに収集したデータを整理・分析して音韻・形態面・統語面にわたる充実を図る。これまでより話者や場面設定にバリエーションを加えて多様な言語使用のドキュメンテーションを行う。島内他方言の文法概略作成及び方言間の比較・対照研究のため、これまでに調査研究を進めている小野津・坂嶺・志戸桶・佐手久・中間の各集落のデータを整理しつつ、方言間で差異が見られる点を洗い出し. その点を中心に集落数を増やして(荒木・阿伝・川嶺を予定)データ収集を進め、方言差を音韻面・語彙面・形態面に渡って総括する。方言間の比較を円滑化するため、方言間の対応語形のデータ管理を進める。各方言間の系統的関係にっいてまとめ、研究会・学会等で発表しフィードバックを得る。前年度より共同調査を進めている八重山西表島船浮方言、奄美請島方言、奄美与路島方言を中心に言語ドキュメンテーションおよび文法の概略的記述のための調査・研究を行う。
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Research Products
(8 results)