2012 Fiscal Year Annual Research Report
稈・葉鞘のデンプン量が減少したイネ突然変異体を用いた糖・デンプン蓄積機構の解明
Project/Area Number |
12J06490
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡村 昌樹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イネ / 非構造性炭水化物 / デンプン / 遮光 |
Research Abstract |
本研究では、葉鞘でのデンプン合成が抑制されたイネ突然変異体(agpl1)を用いて、イネの茎葉部での余剰炭水化物蓄積機構とその生育及び生産性上の意義を明らかにすることを目的としている。 まず登熟期の遮光処理試験を行なった。その結果、agpl1は遮光処理区のみで収量が大きく低下した。この結果は出穂前に稈・葉鞘に蓄積するNSCが寡照条件下における子実の登熟に必要不可欠であることを直接的に証明している。 またショ糖濃度と分げつ数の関連性を明らかにするため、水田圃場において密植及び疎植栽培を行い、分げつ抑制及び促進試験を行なった。一株あたりの分げつ数は、密植で低下し、疎植で増加した。しかし茎葉部の糖・デンプン蓄積特性に栽植密度の効果は見られなかった。これは栽植密度の影響は、分げつ数だけではなく、光や土壌養分の利用効率にも影響を与えるなど多面的な効果があったためだと考えられ、この実験系ではショ糖濃度と分げつ数の関連性を明らかにすることは難しいと考えられた。 さらにはagpl1のソース能について様々な角度から解析を行なった。その結果、agpllは野生型と比べ、分げつ角度が大きく、その原因は葉枕での重力応答性がデンプンの不足により低下していることだということが明らかとなった。この結果は茎部でのデンプン蓄積は炭水化物の一時的な貯蔵としてだけでなく、草型を決める上でも重要な役割を担っていることを示唆している。 これらとともに、agpl1に野生型のAGPL1遺伝子を相補した形質転換体を作成し、agpl1の表現型が相補されるか調べた。その結果、相補系統では野生型と同程度か、それより少し低い程度までデンプン濃度の低下が緩和され、 agpl1の葉鞘におけるデンプン濃度の減少がOsAGPLIの欠損によるものだということが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寡照条件と茎部NSCの関係と相補試験に関しては期待していた結果を得ることができた。一方で、分げつ抑制及び促進試験は予想に反する結果が得られ、研究計画の変更を余儀なくされた。しかしながら、茎部デンプン濃度と分げつ角度に関する新たな知見を得ることができ、これは計画以上の成果が得られたといえる。以上の結果を総合すると、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
密植及び疎植による分げつ制御試験では、ショ糖濃度と分げつ数の関連性を明らかにすることはできなかったため、他の分げつ制御法や遺伝子発現の解析を検討することでこの問題の解決を計る。また分げつ角度の増大が受光態勢に及ぼす影響も調査するなど、agp11のソース能の解析をさらに深める。さらには茎部でデンプン蓄積が抑制されたagp11だけでなく、葉身でのデンプン蓄積が抑制された変異体の解析も行うことで、茎葉部でのデンプン蓄積の意義の全貌を明らかにしていく。
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Research Products
(1 results)