2012 Fiscal Year Annual Research Report
擬β-ターン構造を用いたチオウレア触媒の反応機構解析および新規触媒の開発
Project/Area Number |
12J06505
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東 巧 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機触媒 / 反応機構解析 / 不斉Mannich反応 / ボロン酸 |
Research Abstract |
アミノチオウレアは種々の反応において優秀な不斉触媒として働くことをこれまで報告している。その反応機構解析は主に計算化学によって盛んに行われている。その中でPapaiらはニトロスチレンへのジカルボニル化合物のMichael付加について反応機構解析を行い、それまで提唱されていた反応機構タイプI、つまり求電子剤(E)であるニトロスチレンがチオウレア部位と水素結合し、求核剤であるジカルボニル化合物がアミノ基と相互作用しながら反応する機構に加えて、新たにウレア部位が求核剤と水素結合してプロトン化されたアミノ基が求電子剤(E)と相互作用する反応機構タイプIIを提唱した。しかし、そのような反応機構を証明するような実験化学的データはほとんどない。これらから私はRoute Bが理にかなった反応機構であるという実験化学的データを得ること及び触媒と基質の詳細な水素結合様式を知る目的で反応機構タイプIIで想定している中間体においてβターンミミックとして知られているジアリールアルキン構造を介して触媒と基質を結合させて安定化させた複合体(中間体)モデルを設計した。実際に複合体を合成しIH-NMRを確認したところ、化学シフトの変化から分子内での水素結合の存在を支持する結果を得た。またX線結晶構造解析も行い中間体モデルにおいて詳細な水素結合様式の情報を得た。目的の複合体が合成できたので、Bocイミンを作用させたところ、速やかにMannich反応が進行して単一のジアステレオマーが得られた。このことからMannich反応においてはRoute Bで反応が進行すると立体選択的に望みの生成物が得られることが分かり反応機構タイプIIの妥当性を実験化学的に証明することができた。また、Mannich反応においてX線結晶構造解析などの各種機器データ及び複合体への反応から得られたデータをもとに詳細な反応機構をDFT計算によって明らかとした。また、ボロン酸触媒がα,β不飽和カルボン酸への分子内アザマイケル付加において触媒活性を持つことも明らかとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
反応機構タイプIIの実験化学的に証明はできたが、反応機構タイプ1の実験化学的な証明もしくは否定をすることができなかった。それは反応機構タイプ1を模した中間体モデルの合成が困難を極めたからである。また、達成はできたものの計算化学によるMannich反応の機構解析にも非常に時間がかかってしまった。それは当研究室には計算化学に明るい人がおらず、一から計算化学的反応機構解析法を学ばなければならなかったからである。
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Strategy for Future Research Activity |
反応機構タイプ1の実験化学的な証明もしくは否定は非常に困難であるので、反応機構タイプIIの実験化学的に証明で得られたデータを用いた、新規触媒の設計に取り組もうと考えている。現在のところ、DMAP部位つまり求核触媒部位を持つアミノウレア触媒の開発もしくはボロン酸部位を持つアミノウレア触媒の開発を目指し、検討中である。
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Research Products
(4 results)