2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06532
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
政所 大輔 神戸大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際関係論 / 保護する責任 / 規範 / 国際連合(国連) / 国連事務総長 / 規範起業家 / 2005年国連総会首脳会合 / リビア |
Research Abstract |
本研究は、武力紛争下の市民保護に関する「保護する責任」という新しい規範が、いかにして形成され伝播してきたのかを解明することを目的とする。研究を進めるにあたって、(1)保護する責任の提唱に至る過程(1990年代~2001年)、(2)提唱後、国連の政策課題として認識される過程(2002~2005年)、(3)国連システムへの導入の過程(2005~2009年)、(4)2009年前後以降、実際問題に適用される過程(2009年前後~2011年)の四つの局面に区分して、それぞれ検討・分析を行う。 平成24年度は、上記の特に(2)、(3)、(4)の局面に焦点を当て、研究を進めた。当初、本年度は(1)と(2)について研究を行うとしていたが、聞き取り調査の都合等から、前記の通りに変更した。 本年度の研究成果として、まず、(3)と(4)に関しては、2012年6月刊行の『国連研究』第13号に、査読付きで論文が掲載された。本論文では、2005年以降の加盟国間での保護する責任の議論の状況を概観し、合意の範囲を明らかにした。その上で、保護する責任の実施例の一つとされる、2011年2月のリビア危機に対する国連の対応が、この合意の範囲に照らして、どの程度、保護する責任の実施といえるのかを明らかにした。 また、(2)、(3)、(4)に関しては、同時期の主要なアクターである国連事務総長の役割を明らかにした研究論文を、6月のBritish International Studies Associationと10月の日本国際政治学会で発表した。規範の形成と普及における国連事務総長の役割を分析した研究は、これまでのところ国内外で十分には行われておらず、保護する責任規範の普及を理解する上で重要な視座を提供している。 さらに、(2)、(3)については、米国ニューヨークで国連職員や国連代表部、NGO関係者らへ聞き取り調査を実施し、国連を舞台にした、保護する責任をめぐる交渉や説得の過程を明らかにした。この研究は、2013年4月3日に米国サンフランシスコで開かれた、International Studies Associationで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したように、当初とは異なる予定で研究を進めたが、国内外で研究報告を行い、論文を公刊するなど、順調に進展しているといえる。また、聞き取り調査などの情報・資料収集も、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度に海外で報告した研究を、英語論文として投稿する。また、特に、保護する責任の提唱に至る過程(1990年代~2001年)を明らかにするために、聞き取り調査などの資料収集を引き続き行う。この研究成果は、日本語論文として公表することを考えている。最終的に、本研究のまとめとなる論文を公刊する。研究計画の変更は考えていないが、聞き取り調査の対象者がオーストラリア、カナダ、米国にそれぞれ在住しているため、一度に調査することが難しいという問題がある。この点に関しては、例えば、カナダと米国の対象者には、先方の予定をうまく調整して一度に会いに行くことで対応する。また、場合によっては、電子メールなどで聞き取り調査を行うことも考えている。
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Research Products
(3 results)