2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06551
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
南雲 一章 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 陽電子散乱 / 全断面積 / 磁場フリー / 高輝度低速陽電子ビーム |
Research Abstract |
本申請研究の目的は、陽電子散乱断面積のベンチマーク測定である。具体的には、東京理科大学に建設された静電輸送高輝度低速陽電子ビームを用いて全断面積の磁場なし測定を行い、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の低速陽電子実験施設のビームを用いて、全断面積及び微分断面積の測定を行うことであった。我々の研究グループにより、ヘリウム及びネオン原子標的に対して陽電子散乱全断面積の磁場なし測定が初めて行われ、その結果は従来の磁場環境下での測定との差異を指摘し、それらの見直しを示唆するものであった。 平成24年4月からは、アルゴン原子標的に対する陽電子散乱全断面積の磁場なし測定を行った。これまでの研究グループは、衝突エネルギー10eV以下の領域で特に異なる結果であった。低エネルギーでラムザウアー効果が観測されたと報告しているグループもあれば、それを否定するグループもある。従って、本研究による、磁場の影響を受けない環境下での信頼性のあるより理想的な測定に、世界各国の研究グループから関心が寄せられている。しかし、使用している陽電子ビームの強度が非常に弱いため、一つの気体標的に対して数ヶ月から1年近くの測定時間が必要である。研究期間が極端に短かったため現状では暫定的な結果を得るに留まる。今後も陽電子散乱実験を継続する予定であり、アルゴン原子標的に限らず、様々な気体標的に対して全断面積の磁場なし測定を行う所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究期間が極端に短かったため、当初の計画を達成することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究でボトムネックとなったのが、陽電子ビームの強度が非常に弱いことである。この問題を解決する方策はいくつか考えられるが、もっとも有効的なものは陽電子線源(放射性同元素)のアクティビティを上げること、つまり新しい線源を使用することである。近々、新しい線源を入手する予定があり、その後は飛躍的に研究が推進することが期待される。
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