2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06571
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 啓太 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近代史 / 地方行政 / 地域社会 / 地方財政 / 日本 |
Research Abstract |
本年度は、従来の史料調査に基づく研究成果の発表を進めつつ、史料調査の進展に伴い新たな分析視角を獲得する手掛かりを得た。 まず、前年度以来の調査に基づく成果として、国立公文書館が所蔵する「自治省から移管された旧内務省文書」を用いた論文を発表し、地方行政を所管する内務省内部の実態に接近することに成功した。また、埼玉・群馬県の県庁文書を用いた論文でも、従来見逃されてきた市町村行政の変化の傾向を捉えた。 上記により、「研究の目的」で掲げた①内務省などの機関は、どのような地域社会を構想したか②各中央・地方機関は、それぞれどのような方法・意図で地域社会に働きかけたか③上記2点に対し、地域社会の側はどう応じたのか④地方行政の改革は、地方改良運動とどのように関連づけられるのか、について、内務省から地方までを視野に収めて考察を進めることができた。 しかし、上記のようなこれまでの考察は、地方行政機構の縦の関係のみを捉えたものであった。これに対し、本年度対象を広げつつ史料調査を進めたことにより、新たな視角を構築する手掛かりを得た。その一歩目の成果として、市町村による企業への課税をめぐる調整を学会で発表した。これは従来の考察では検討できていなかった地方行政機構の横の関係を視野に収めることができる。また、この検討を通じ、地方行政機構が問題を解決しようとして行う調整や連絡が積み重ねられることで、地方行政機構内部の関係においても、課税対象となる企業との関係においても安定性を獲得していくという展望を得ることができた。研究史上では、たとえば法令などを中心とする中央からの改革や一町村のみの分析から見通しが立てられることが多かったが、これに対し報告者の研究は地方での取り組みによりもたらされる変化を、地方行政機構を広く視野に入れながら捉えることができ、研究史を新しい段階に引き上げることができるのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、県庁文書を中心とする史料調査を進め、研究成果の発表や投稿を行っているため。また、新たに調査地を増やし、興味深い事例を発見しているほか、その事例の分析を通じ、当初の計画に加え、地方行政機構の横の関係に注目する、新たな分析視角を得るに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の史料調査を継続し、研究成果の発表や投稿を行う。また、分析視角を新たに得たことから、これを生かすために、事例を探す調査地を効果的に選びながら史料調査を継続する。この新しい視角と、従来の研究成果を組み合わせ、研究のまとめを行う。
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Research Products
(5 results)