2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J06574
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
奥山 倫 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子ドット / 超放射 / 光学フォノン / レーザー / アンチバンチング / 量子情報処理 / 非平衡量子ダイナミクス / 量子光学 |
Research Abstract |
量子ドットは将来の量子計算機における量子ビットの候補として注目されているデバイスである。報告者は、共通のボソン場と結合した二準位系(量子ビット)の間に自発的にエンタングルメント(量子もつれ)が成長していく超放射現象に着目し、量子計算のプロトコルとしての応用を想定した研究を行っている。今年度は半導体二重量子ドット(電荷量子ビット)と半導体基板の格子振動を司るボソン場である光学フォノンとの相互作用に着目し、バイアスを印可した量子ドットと光学フォノンの非平衡ダイナミクスを理論的に研究した。光学フォノンは量子ドットと結合するΓ点近傍の長波長領域において平坦な分散関係を持つため、量子ドットから放出される光学フォノンは定在波を形成する。その結果、光学フォノンはあたかも光共振器中のフォトンのように量子ドット近傍に定在波をつくることが明らかになった。その結果、二重量子ドットのエネルギー準位間隔を光学フォノンのエネルギーに調整すると、量子ドットを介した電流によってフォノンが増幅され、フォノンのレーザー発振およびアンチバンチングが実現することが明らかになった。これは極めて重要な量子光学効果であるレーザー発振が、半導体の格子振動というまったく異なる舞台で実現することを示した画期的な成果であり、格子振動を利用した量子情報処理という新たな可能性を切り開くものである。報告者はこの成果を国内外の学術会議で報告するとともに、日本物理学会の発行する欧文誌、J.Phys.Soc.JPn.(JPSJ)に論文を発表した。この論文は極めて高く評価され、日本物理学会のJPSJ papers of Editors' Choiceに採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は交付申請時に想定していなかった非自明で興味深い物理現象を発見し、その解明に重点を置いて研究を行った。この成果は量子ドットおよびボソンを利用した量子情報処理に新たな可能性を切り開くものであり、その知見をふまえて、研究を進めて行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
光学フォノンなどのボソン場と複数の量子ビットが結合した状況を理論的に解析し、超放射現象によるエンタングルメントの生成機構を明らかにする。量子計算への応用を念頭に、環境による擾乱や、量子ビットの不均一性の影響等を検討する。また超放射現象を利用した光学フォノンレーザーやフォノンのアンチバンチングによって放出されるフォノンの観測方法を理論的に考察し、量子情報処理への応用を検討する。
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Research Products
(6 results)