2012 Fiscal Year Annual Research Report
多細胞体構築において階層間をつなぐ非典型的カドヘリンの機能解析
Project/Area Number |
12J06577
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新田 昌輝 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 集団的細胞移動 / 非典型的カドヘリン |
Research Abstract |
多細胞生物の体は器官、組織、細胞といった階層構造を持ち、発生過程においてはこれらの階層が複雑に相互作用しながら全体を作り上げていく。例えば多くの発生の局面においては細胞が体軸に沿って集団的に移動していく。このような細胞の移動様式は集団的細胞移動と呼ばれ、正常な器官発生だけではなく、癌細胞の浸潤といった病態の進行にも関与することが示唆されている。近年、ショウジョウバエ腹部のlarval epithelial cells(LECs)が変態期に示す集団的細胞移動においては、非典型的カドヘリンDachsous(Ds)がLECsの後側への移動を制御することが報告された。しかし、Dsがどのようなメカニズムで集団的細胞移動を制御するかはほとんどわかっていない。 まず、腹部におけるDsの発現パターンを確認した所、Dsの発現レベルが体軸に沿って変化することを見出した。このようなDsの発現レベルの変化がLECsの移動方向を決定づけるのではないかと考え、研究を進めている。また、LECsのライブイメージングでは、LECs移動開始後にDsの細胞内局在が変化することを見出した。具体的には、Dsが細胞質へ局在しなくなり、また、細胞膜上の局在の偏りが強くなる。現在、このようなDsの細胞内局在の変化とLECsの移動との機能関係を調べている。さらに、Dsが集団的細胞移動を制御する分子メカニズムを明らかにする目的で、免疫沈降と質量分析によるDsやDsと協調的に機能するFat(Ft)の新規結合分子の探索を行った。現在得られた結合分子候補の集団的細胞移動における機能解析を行っている。 以上の解析を進めれば集団的細胞移動の新たな制御機構を明らかにできると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエ腹部においてDsが集団的細胞移動を制御するメカニズムの解析を進めた。その結果、Dsの発現レベルが体軸に沿って変化することと、LECs移動開始後にDsの細胞内局在が変化することを見出した。 また、免疫沈降と質量分析によるDsやFt結合分子の探索を予定通り終え、現在得られた結合分子候補の機能解析を進めている。以上のことから研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはDsを異所発現させてLECsの移動方向がどう変化するかを確認し、Dsの発現パターンとLECsの移動方向とを関連付ける。次に、Dsの細胞内局在の変化とLECsの移動との関係を調べる。具体的にはLECsの移動方向を変化させた際のDs細胞内局在やDsの細胞内局在を遺伝学的手法によって変化させた際のLECsの移動を確認する。さらに、Dsが集団的細胞移動を制御する分子メカニズムを明らかにするために、同定したDsやFt結合分子候補や、DsやFtが制御するHippo pathwayや平面内細胞極性に関連するタンパク質群のLECs移動における役割を調べる。以上の解析を通して、Dsが集団的細胞移動を制御する仕組みの全容を明らかにしていく。
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Research Products
(4 results)