2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06611
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 俊資 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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Keywords | リビングアニオン重合 / ジビニルベンゼン類 / 選択重合 / 金属アルコキシド |
Research Abstract |
本年度は①p-ジビニルベンゼン(p-DVB)のリビングアニオン重合をさらに安定に行える系を探索すること、および②ポリ(p-DVB)セグメントを導入した特殊構造ポリマー(Architectural polymer)を合成することを同的に研究を行った。DVB類に代表されるジビニル型モノマーの重合は、一般に成長と架橋が同時に進行するため急速にゲル化が進行するとされており、その制御は非常に困難である。近年になり我々は、p-DVBの重合系に大過剰のtert-BuOKを添加すると側鎖ビニル基への副反応は著しく抑制され、設計通りの一次構造を有する可溶性のポリマーが定量的に得られることを見出した。また、ブロック共重合が定量的に進行したことから、この重合は選択的かつリビング的に進行していることを見出した。 ① : これまでアルコキシド添加剤の対カチオンとしてLi, Na, Kの3種を検討したところ、イオン半径の大きいK塩を用いた時のみ、著しい副反応抑制効果が確認されていた。そこで新たに対カチオンCsの塩を用いて重合を行なったところ、重合速度の著しい低下を伴うものの、従来の系よりも長時間安定に重合が進行する傾向を見出しつつある。また新たな添加剤としてLewis酸性の化合物に着目して検討したところ、重合速度の低下は観察されたものの、現時点では重合制御が十分に達成されていない。 ② : 従前の検討から、適切な条件下ではポリ(p-DVB)アニオンが安定に存在できることが見出されている。この安定なリビングポリマーを利用し、新たにポリ(p-DVB)セグメントを含む種々のマルチブロック共重合体や星型高分子の合成に成功した。ポリ(p-DVB)は各モノマーユニットの側鎖に高反応性のビニル基を有しており、このような反応性のセグメントを導入したArchitectural polymerは今まで合成されておらず、非常に魅力的であると思われる。さらにこれらの合成を通じて、(1) p-DVBはスチレン骨格を有するにも関わらず、予想に反してそのアニオン重合性は2-ビニルピリジンと同程度に高い、(2)短時間であれば室温常圧下でも高反応性のポリ(p-DVB)セグメントを副反応なく取り扱うことができる、という新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、Lewis酸を添加することによる影響や、重合中における対カチオン依存性についてより詳細に検討を行い、重合制御の機構について考察した。また、この安定なポリマーアニオンを利用することで、ポリ(p-DVB)セグメントを含む種々のブロック共重合体や星型高分子の合成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
重合条件についてさらに検討する。これまで極性溶媒(THF)中で重合を行なってきたが、より室温に近い条件で重合制御を達成するため、非極性溶媒中での重合を試みる。一般に塩類は非極性溶媒中であまり高い溶解性を示さないが、過去にTHF中で著しい副反応抑制効果を示したPotassium hexamethylclisilazideは例外的に非極性溶媒中でも比較的よく溶解するとされているため、同様の効果が得られるのではないかと期待している。 さらにジビニルベンゼンに類似した構造を有するジビニル型モノマー類の合成とアニオン重合を試み、p-ジビニルベンゼンと重合挙動を比較する。特に芳香環上への電子供与性基の導入や、長い共役系を持つモノマーに着目して検討を行う。 また得られたポリマーの側鎖ビニル基を利用し、種々の官能基やグラフト鎖の導入反応を試みる予定である。
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Research Products
(7 results)