2012 Fiscal Year Annual Research Report
記憶機能低下に伴う脳波位相同期のメカニズム解明とアルツハイマー病早期発見への応用
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12J06625
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 雄太郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脳波 / 信号解析 / 神経細胞集団モデル / アルツハイマー病 / 脳波位相同期現象 |
Research Abstract |
本研究の目的は脳波測定データからアルツハイマー病患者に特異的な特徴を見出し,アルツハイマー病の早期診断指標を発見することである.そこで,脳波位相同期現象に着目し研究を進める計画を立てた.離れた脳部位で測定される脳波の位相が同期する現象を脳波位相同期現象と呼ぶ.この脳波位相同期現象は短期記憶能力の高いヒトほど強い同期が観測されることが知られている.また,疾患との関連では,アルツハイマー病患者において記憶機能の低下とともに脳波位相同期現象の低下が指摘されている.そこで,脳波位相同期現象から短期記憶に伴う脳活動の強弱を測定し,疾患の診断へ応用することが期待されている.この脳波位相同期現象の測定を用いた診断手法の確立に際しては,短期記憶に伴う神経の発火から脳波位相同期へいたるまでのメカニズムが不明である問題点が挙げられる.そこで本年度はアルツハイマー病患者に特徴的な脳波の変化を再現する脳波発生数理モデルを構築することを目的に研究を進めた.また,健常者を対象に短期記憶機能と脳活動の関係性を探るため,NIRSと呼ばれる近赤外線を用いた脳活動の測定を行なった.これらの研究の結果,アルツハイマー病患者に特異的な脳波の変化であるスローイングと呼ばれる脳波のパワーの変化を再現する数理モデルを構築することができた.またNIRSでの測定信号から求めた脳活動が被験者ごとの短期記憶能力と相関関係があることを示した.今年度数理モデルで再現できた特徴は脳波位相同期とは異なり,脳の1部位で見られる現象である.次年度以降,今年度作成したモデルを拡張して脳の多部位の数理モデルを構築し,脳波位相同期現象をコンピューター上でシミュレーションし,アルツハイマー病患者の脳波位相同期現象の変化の原因を考察する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度,アルツハイマー病患者の脳波に見られる特徴を再現する数理モデルを構築することができた.このモデルを拡張することで対象としている脳波位相同期を考察するモデルを容易に構築することができるため,本研究で重要な基盤となる部分を本年度で構築できたと考えられる.また,構築したモデルのパラメータを実際の実験結果から推定する際に脳波以外にNIRSのデータも用いることで精度が向上することが予想される.本年度NIRS実験から得られた結果を今後活用する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の進め方であるが,数理モデルを使用して脳波位相同期を再現することを次年度行なう予定である.また実際に測定した脳波のデータから数理モデルのパラメータを求める手法を構築する予定である.
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Research Products
(3 results)