2012 Fiscal Year Annual Research Report
マルチモーダル感覚呈示のためのサーマルハプティクスの創成
Project/Area Number |
12J06630
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森光 英貴 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルチモーダル感覚呈示 / ハプティクス / 熱感覚 / 熱電変換デバイス / ペルチェ素子 / 分布定数システム / バイラテラル制御 / 電機統合システム |
Research Abstract |
本研究は熱感覚を人間の感知できる範囲において漏れなく再現し、さらにその技術を核としながら力覚呈示技術と統合することで新たなマルチモーダル感覚呈示手法を構築することを目的としている。本目的を実現するにはまず熱電変換デバイスの一種であるペルチェ素子を用いた熱感覚呈示システムの制御帯域を向上させることが課題となる。 そこで本研究では熱デバイスと外部環境間で交換される熱流情報の熱流センサレス推定に関して研究を行った。熱流センサレスにすることで熱デバイスの熱容量が減少し、応答性が改善することが期待される。しかしながら熱現象は熱拡散方程式によって支配されるため、センサレス推定においては分布定数系の観点に基づいた解析が必要となる。 本研究では従来でも行われている対象システムの分布定数系に基づく解析を発展させ、さらに推定値評価用の熱流センサに関しても分布定数系に基づいた理論を取り入れることで、熱流センサレス推定およびその評価手法を確立した。 また、将来的に熱感覚と他の感覚を統合させた遠隔地間のマルチモーダル感覚通信を行うため、モータを用いた力覚情報のリアルタイム伝送における通信遅延補償に関しても研究を行った。通信遅延が存在する場合、片方の場所において発生した感覚情報を瞬時にもう一方へ伝送することが困難となり、システムの不安定化を招く恐れがある。本研究では通信遅延下におけるシステムの相互感覚伝送に関して解析を行い、制御器内部に解析結果に基づいた専用の遅延補償器を付加することで、相互感覚呈示におけるシステムの安定性を向上させることに成功した。以上の研究成果はマルチモーダル感覚呈示システムの構築を行う上での要素技術として有用となると考えられる。研究で得られた知見に関しては1件の国内学会発表、および2件の国際学会発表として成果へと結実することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はペルチェ素子の分布定数システムの観点に基づく解析等、熱感覚の遠隔通信や力覚伝送技術との統合における基盤技術を確立することを目標としている。本研究では分布定数理論に基づく流入熱量の熱流センサレス推定およびその評価手法、バイラテラル制御の基づく力覚伝送における通信遅延補償といった新しい技術が研究成果として得られており、計画において掲げられている目標以上に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においては本年度にて得られた知見に基づき製作した熱感覚デバイスを複数台用い、遠隔地間において精度よくリアルタイムに熱感覚を伝送するシステムの制御法を構築する。初年度において研究を行った通信遅延補償手法の熱感覚伝送に対する応用に伴い、特にペルチェ素子を集中定数システムでなく分布定数システムとして扱った場合の熱感覚伝送技術の構築に関して研究を行う。また、本研究において初めは基礎検討のために単体の制御用コンピュータを用いて制御を行うが、最終的には複数のシステム間においてネットワークを介した通信を行い熱感覚通信手法の評価を行う予定である。
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Research Products
(3 results)