2013 Fiscal Year Annual Research Report
マルチモーダル感覚呈示のためのサーマルハプティクスの創成
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12J06630
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森光 英貴 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルチモーダル感覚呈示 / ハプティクス / 熱感覚 / 熱電変換デバイス / ペルチェ素子 / 分布定数システム / バイラテラル制御 / 電機統合システム |
Research Abstract |
本研究はマルチモーダル感覚呈示において温熱覚を伝送する技術を中心とし、それを力覚呈示技術と統合させた理論体系を構築することを目的としている。本理論に関しては熱デバイスの設計や遠隔地間の温熱覚・力覚の双方向制御といった様々な項目に対する研究を必要とするが、本年度では上記の双方向制御を中心的に扱い研究を行った。遠隔地物体をあたかも手元で触れているかのように温熱覚や力覚を呈示するには熱エネルギー保存則や作用・反作用の法則を人工的に遠隔地側デバイスとの間で再現する必要があるが、温熱覚および力覚情報の伝送における通信遅延が存在する場合は制御系の安定性などが劣化してしまう。そこで本研究では非線形フィルタを用いた、通信遅延下の双方向制御の性能向上に関し研究を行った。解析および実験結果より提案システムは一般的な位相進み補償器を用いた場合に比べ遠隔物体との安定な接触を実現し、遅延要素の補償に関して高い性能を有することを確認した。また、温熱覚および力覚の異感覚情報を混合し呈示させることを見据え、操作者側および遠隔地側システムのデバイス帯域が異なる場合における双方向制御に関しても研究を行った。本項目では熱エネルギー保存や作用・反作用の再現性能に関し解析を行い、それに基づき同期性能を向上させるための補償方法を構築することに成功した。温熱覚呈示用デバイスと力覚呈示用デバイスは応答性に差が存在するため、両感覚情報の混合再現において提案システムは有用となることが期待される。 上記に加え、前年度に行っていた熱デバイスに流入する熱流のセンサレス推定に関しても引き続き研究を行い、推定オブザーバのパラメータ決定方法や熱流センサレス制御に対する適用といった項目において新たに理論を進展させることができた。研究で得られた知見に関しては2件の国際学会発表として成果へと結実することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は温熱覚や力覚情報の遠隔地間における双方向呈示を主な研究対象としている。これに対し、情報通信における遅延が存在する場合の制御系の安定性向上方法やデバイスの制御帯域が異なる場合の補償器設計といった様々な成果が具体的に得られている。加えて、前年度において扱っていた熱流のセンサレス推定方法に関しても理論の進展があったため、サーマルハプティクス分野に関する研究が当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の期間においては、これまでに研究を行ってきた温熱覚呈示や力覚呈示に関する技術を核とし、両感覚情報を統合同期させるための研究を行う。温熱覚は主に受動的な熱接触によって励起されるのに対し、力覚は力加減によって調節ができるため能動的に発生させることができる。また両感覚については接触時における物理現象や人間の感覚器官としての応答性に違いが見られるため、本研究ではこれらの要素を陽に考慮した上でシステム設計法や制御理論を発展させる。上記項目に関し、リアルタイムの遠隔地間通信に加えてデータベースに基づく感覚情報呈示も扱い、高度な機能を有するマルチモーダル感覚呈示システムを構築する。
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Research Products
(2 results)