2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06653
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 祥子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポリロタキサン / シクロデキストリン / 包接錯体 / 環動ゲル |
Research Abstract |
本研究の目的は、外部刺激に応答して構造が変化する高分子を合成し、その外場応答を観察することにあった。この構造変化高分子にとって要となっているのは、環状分子が軸分子上に機械的に拘束されたロタキサン構造である。ロタキサン構造の合成には、環状分子による軸分子の分子認識を利用した合成法が最も広く利用されており、この合成法はまた、複数の環状分子が軸分子上に機械的に拘束された構造であるポリロタキサン構造の合成にも利用されている。本年度は構造変化高分子の土台であるロタキサン・ポリロタキサン構造を系統的に合成するための基礎として、シクロデキストリンによる高分子の包接条件と生成する包接錯体構造の関連性を調べた。その過程で、高分子量の軸分子を用いた場合でも高い被覆率のポリロタキサンが合成できる条件を発見した。また、従来の合成法では包接錯体の形成に伴って系が白濁するため、包接錯体形成過程の観察・解明が困難であり、このことがポリロタキサン構造中の環状分子による被覆率を制御することを困難にしていた。しかし今回、透明性を保ちながらも従来法と同程度の被覆率を持つ包接錯体形成が進んでいると考えられる条件が発見された。これにより、被覆率を決定している要因がシクロデキストリンの結晶化でないことが示唆された。 ポリロタキサンの環状分子同士を架橋することで調整されるゲルを環動ゲルと呼び、スライディング転移など架橋点の可動性に起因する多様な物性が報告されている。今回、軸分子にブロックコポリマーを用いたポリロタキサンから調整した環動ゲルでスライディング転移を初めて観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた構造を持つ分子を合成するには至っていないが、高分子を軸分子としたロタキサン構造やポリロタキサン構造の合成にあたって現在広く利用されている、シクロデキストリンによるポリマーの包接現象の解明につながる実験結果が得られた。また、ブロックコポリマーを軸高分子とする環動ゲルで初めてスライディング転移を発見し、スライディング転移の普遍性を示す結果も得られたため、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度スライディング転移を観測した環動ゲルの原料であるブロックコポリマー主鎖ポリロタキサンは、外部刺激に応じて環状分子配置を変化させ、ブロックコポリマー状の状態とランダムコポリマー状の状態の変換ができることが分かっている。この変化がスライディング転移をはじめとした環動ゲルの物性に及ぼす影響について明らかにしていく。 本年度発見した白濁を起こさない包接錯体形成条件で光散乱測定やX線散乱測定で時分割測定を行うことで、シクロデキストリンと高分子の包接錯体形成において環状分子の数を決定する要因を明らかにする。
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