2013 Fiscal Year Annual Research Report
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12J06653
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 祥子 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポリロタキサン |
Research Abstract |
複数の環状分子が線状高分子を包接し、末端が嵩高い置換基で留められた構造をポリロタキサン(PR)という。PR中の環状分子は軸上で凝集体を形成する。この環状分子凝集体はPR同士の架橋点としてふるまうことがこれまでの研究で明らかになっている。一般に、架橋点の分布や形成・崩壊は架橋体の力学物性を支配する。そこで、PR中の環状分子同士の凝集による架橋体のダイナミクスを明らかにするために、環状分子凝集体の形成・崩壊について観察を行うことにした。ポリマーを包接した状態の環状分子が形成する凝集体を、基板上にポリマーを固定して高分子薄膜とすることで、系全体の沈殿やゲル化を阻害しつつ観察することにした。PRの観察の前段階として、まず、環状分子によるポリマーブラシの包接を観察することにした。ポリマーブラシ化した軸ポリマーを環状分子水溶液と接触させ、環状分子によるポリマーの包接を観察することにした。これにより、環状分子の凝集体形成を薄膜の構造変化として観察することができる。 シクロデキストリンによるポリマーの包接現象は、様々なポリマー種に対して報告されている。その中で今回は、ポリロタキサン軸分子として最も広く研究されている親水性高分子、ポリエチレングリコール(PEG)と、疎水性高分子のポリジメチルシロキサン(PDMS)の2つの場合について研究を行うことにした。その結果、PEGと環状分子の包接は、ポリマー末端から起こることが明らかになった。また、PDMSの包接はポリマーと水のバルク同士の界面で起こるのではなく、攪拌などによって水中に飛び出し、非常に不安定化したポリマー鎖に対して起こることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ポリロタキサンからなる物理ゲル中で、環状分子の凝集体形成や崩壊のダイナミクスをとらえるには至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に引き続き、環状分子の凝集がポリロタキサン凝集体の物性や環状分子による軸分子の包接現象に与える影響について研究を行う。まず、ポリロタキサンの前駆体である包接錯体が形成される過程、すなわち、環状分子による線状高分子の包接過程をポリマーブラシの包接により観察する。これにより、環状分子凝集体の形成や、線状高分子上の環状分子配置が変化した際のポリマーブラシの構造についての知見を得る。その後、ポリロタキサンをポリマーブラシ化したものを観察し、包接錯体形成で得られた知見をもとに、ポリロタキサン軸上の環状分子配置変化のダイナミクスを明らかにする。
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