2012 Fiscal Year Annual Research Report
異なる金属量環境下における原始星の星周物質の化学的多様性の研究
Project/Area Number |
12J06664
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
下西 隆 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 天文学 / 星間物質 / アストロケミストリー / マゼラン雲 / 光赤外天文学 / 赤外線天文衛星「あかり」 / 分光 / 氷 |
Research Abstract |
我々の住む地球や生命の材料となり得る物質は宇宙空間のどのような環境で生成され、どのような化学的進化を遂げ、そしてどのような多様性を持つのか、これは現代の天文学、特にアストロケミストリーと呼ばれる分野の大きな興味の一つである。私は近傍の銀河であるマゼラン雲に存在する原始星に着目し、星周環境に存在する様々な物質の化学状態について、天の川銀河内の原始星との比較研究を行っている。 今年度は3年に渡る本研究計画の初年度に当たる。私は科学研究費補助金交付申請書において、新たな観測計画の立案や既に取得されているデータの解析、それに基づく論文の執筆など、複数の項目を達成目標として挙げた。結果として、本年度はそれら全ての項目について達成又は部分的達成を遂げた。主な成果は以下の通りである。 ・大マゼラン雲内の原始星に対する多波長赤外線観測データに基づく論文の執筆・採択 ・赤外線衛星「あかり」により取得された大マゼラン雲の近赤外線分光サーベイデータに基づくスペクトルデータベースの作成・公開、及び関連する論文の執筆・採択 ・大型電波干渉計ALMAによるマゼラン雲内の原始星の分子輝線観測提案の採択 ・大型望遠鏡VLT搭載装置IS飴Cによるマゼラン雲内の原始星の近赤外線分光観測計画の採択及び遂行これまでに取得した観測データに基づく論文の執筆及び発表は今年度の重要な成果である。また、大型望遠鏡における観測時間の獲得は来年度以降の研究を発展させる上で重要な布石となった。これら以外にも、星形成コアの化学進化数値シミュレーションモデルの開発準備や、国際学会などにおける研究発表なども行い、本年度は多岐にわたる成果をあげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究目標を着実に達成することができた。また、当初の目標に加えて、既に取得したデータに基づく論文の執筆や、関連する研究発表なども積極的に行い、計画以上の進展が達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは主に赤外線の観測データに基づいた研究を進め、氷やダストといった固体物質に着目して銀河系外原始星の調査を行ってきた。今後は、より幅広い視点から原始星の星周物質の化学状態を探る必要がある。具体的には、(1)電波観測による気体分子の調査、(2)観測結果を再現するための理論モデルの構築、の2点に注力すべきであると考えている。これらを実行する為の準備は本年度の研究において十分に行ってきた。来年度以降は、これらの布石を存分に活用し、観測・理論の両面から銀河系外原始星の星周物質の研究を大きく発展させていくことに尽力する。
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