2012 Fiscal Year Annual Research Report
畿内譜代大名岸和田藩の都市近郊農村における都市と農村の変容
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12J06675
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
萬代 悠 関西学院大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本史 / 日本近世史 / 岸和田藩 / 泉南村落 / 地域社会 / 地主経営 / 櫛産業 / 要家 |
Research Abstract |
これまで研究代表者は、昨今盛んに議論される畿内・近国の支配構造研究や地域社会構造研究の問題点として、1、「支配国」論における畿内譜代藩領研究の弱さ、2、戦後畿内村落史研究への関心の停滞、3、畿内の地域社会研究に社会経済史的要素を組み込む必要性があると考えてきた。2012年度において研究代表者は、特に問題点2の解決に取り組んだ。具体的には、かかる当地域と要家の地主経営を多角的に分析にすることによって、(1)年貢・小作料納入の大半が銀納で賄われていたこと、(2)畠中村は、農業の魅力が乏しく、櫛挽稼ぎを中心とした諸稼ぎが同村百姓の再生産維持を助けていたこと、(3)畠中村では町方への離村が頻出し、村内の労働力不足が問題化していたこと、(4)要家の地主経営戦略は、小作人不足・小作人の年貢未進に規定されていたこと、(5)要家一族は、村内の縄延びの大きい土地(年貢負担の少ない土地)を占有しつつも、多様な方法によって同村百姓の再生産を支援していたこと等を明らかにした。 他方、問題点3の解決方法として、研究代表者は泉南村落と地域産業である櫛産業の総体的把握に取り組んだ。具体的には、(1)和泉櫛産業の主たる担い手である櫛問屋または櫛仲買の性格を段階的に把握すること、(2)櫛の生産・流通過程を段階的に把握すること、(3)櫛仲買を地域別に峻別し、近木庄地域の櫛仲買の特質を明らかにすること、(4)畠中村を事例に、櫛産業の盛衰と、それに規定された村落構造の変容を明らかにすることを目的とした。かかる前提に基づいて、研究代表者は、櫛挽稼ぎ(仕事)を求める直接生産者の要望と、それに応える担い手側の葛藤、流通機構の整備や櫛作成の分業化等、担い手が村落または地域に与えた影響を明らかにした。以上の社会経済史的分析によって、研究代表者は、直接生産者の存在形態や村落社会の変容が、地域産業とその担い手の変動に規定されていたことを実証した。こうした成果は、問題点2、3を解決する重要なファクターになり得ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の具体的な調査計画は、(1)「要家文書」の中から櫛産業関係史料の収集や年貢収納関係史料群の撮影・翻刻作業、(2)近世期の櫛産業を統一的に把握、(3)要家の地主経営を分析することであった。そのうち、該当史料の収集・撮影は完了し、(3)については論文として成果を出した。しかし、(2)の成果については現在機関誌に投稿中のため、論文発表は未だできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度において研究代表者は、畠中村の村落構造と庄屋要家の地主経営の特質を明らかにした。 2013年度は、かかる基礎的研究を踏まえて、(1)要家の地主経営と地域的特質の連関性、(2)櫛産業を担う在方商人と直接生産者の動向(泉南村落と櫛産業についての論文発表)、(3)岸和田藩の復興請負人である了簡人の職掌、(4)岸和田藩の大庄屋格である七人庄屋の基礎的分析、(5)岸和田藩の中間支配機構(郷会所・七人庄屋・諸掛り役人)の総体的把握等に取り組む。研究計画では、個々村落をこえた泉南地域の特質や、領主の規定性等を明らかにすることを目的としていた。しかし研究代表者は、かかる議論の前に岸和田藩の行政機構や村落支配の基礎的分析が必要であると思い至った。そのため、2013年度研究計画の一つの柱として、研究蓄積の少ない岸和田藩の村落支配の基礎的構造((3)~(5))を把握する。
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Research Products
(3 results)