2013 Fiscal Year Annual Research Report
畿内譜代大名岸和田藩の都市近郊農村における都市と農村の変容
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12J06675
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
萬代 悠 関西学院大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地主経営 / 岸和田藩 / 村落構造 / 地域社会 / 地主小作関係 / 地主制 / 要家 / 櫛産業 |
Research Abstract |
平成25年度では、研究目的②(近世中後期、畠中村・神前村を中心とした農村社会の実態と、庄屋要家の経営的・政治的動向の解明)について、進展が見られた。研究代表者は、地域的特質に目配りしつつ、1)村落構造、2)主要産業、3)地主経営の問題を検討してきた。その結果、先進地と称される南泉州村蕗は荒廃と衰退の問題を抱えていたことが明らかになった。畠中村では、天明期に主要産業である櫛産業が衰退期を迎えたために、村内での就業機会を失った村内百姓が村外へ離村した。離村問題が深刻化した結果、村内では荒廃地・手余り地が頻出し、農業労働力の不足が顕著になった。一方、町方は繁昌し、町方での非農業就業の機会が増加した。そのため、町方へ労働力が流出し、容易に離村を企てるような「職人百姓」が多数出現した。彼らは、農業と諸稼ぎの比重をある程度選択できたために、地主(庄屋)に譲歩を迫ることもあった。こうした小作人の巧みな経営戦略や居村の離村問題に苦慮しつつ、要家は地主経営を維持・展開する必要があった。かかる前提のもと研究代表者は、畠中村の村落状況の変化に目配りしつつ、明和~天保期(1766~1832)における要家の地主経営を検討した。主要産業の衰退・凶作による米価高騰・町方への労働力流出といった、天明期以降に表出した諸問題に取り組むために、要家は多くの対応策を講じた。とりわけ要家は、自身が庄屋をつとめる小作人への優遇策――定免引率の増加・干鰯代の貸与や施与――を講じた。農業と非農業就業を上手く組み込む小作人側の経営戦略に規定されて、要家は小作人への譲歩を認める必要があったと考えられる。かかる要家の対応策は、離村を抑制し人足を確保したい村役人としての立場と、小作人を確保し経営を維持・展開したい一地主としての立場とが複雑に絡み合って実行されたことを解明した。以上、経済的条件だけでは把握できない、地主経営のありようを追究してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明和~天保期(1766~1832)における要家の地主経営を検討した。この成果は、『日本歴史』2014年1月号に採録された。また、近世畿内地主制史研究の成果と課題を総括したうえで、地主の小作人編成・小作料減免を分析する必要性を提起し、地主経営論の進展を目指した。この成果は、『論集きんせい』2014年5月号に採録された。
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Strategy for Future Research Activity |
①享和期~明治初年(1801~1868)を対象に要家の地主経営を検討する。これまで研究代表者が提起してきた、経済的条件に回収されない地主経営分析を基礎に、要家の経営戦略を解明する。 ②政治的中間層としての要家の活動を検討することで、政治的中間層ゆえに生じた問題と、地主としての要家の経営とがどのような相互規定関係を持っていたかを解明する。これまで地主経営分析の成果をもとに、要家の持つ多様な立場から居村―地域社会―藩領社会を捉え、要家がどのような利害を取捨選択していたかを把握する。 ③経済的条件のみで捉えられてきた富農を再検証する。
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Research Products
(4 results)