2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06822
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
毛塚 雄己 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アルミナ / 粒界 / 転位 / 偏析現象 / 透過型電子顕微鏡法 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
1.Erを添加したアルミナ(0001)面小角ねじり粒界を作製し、らせん転位ネットワークまわりのEr元素偏析分布をSTEMを用いて解析した。らせん転位まわりのドーパント偏析分布を直接観察した例はこれまでになく、この観察結果は極めて重要なものである。しかし、静水圧場を持たないらせん転位まわりのドーパント偏析機構については明らかになっていない。さらに、転位まわりのひずみ場は広範囲に広がっているため転位を含む巨大なセルのシミュレーションを行うことは困難である。そこで、本研究では120原子からなるアルミナバルクセルを作製し、座標変換によりせん断ひずみを加えることで、らせん転位周辺のひずみ場を再現し、このセルのなかのひとつのAlイオンをErイオンで置換し、エネルギーおよび結合状態変化の議論を行った。その結果、ひずみを大きくするほどErイオンとそれに近接する酸素イオンとの間の結合において共有結合性が増大していることがわかった。 2.ルビー/サファイア(0001)面ヘテロ界面を作製し、界面に導入される微細構造をTEM/STEMを用いて解析した。その結果、界面における傾角成分は平行に配列した高さ1/3[0001]のボイドにより補償されることが明らかになった。 また、格子定数差に起因するミスフィット成分およびねじり成分は1種類の六方状転位ネットワークを形成することで補償されることがわかった。(0001)面内の最小並進対称ベクトルは1/3<11-20>であり、ねじり成分がなかった場合には<1-100>方向にミスフィット転位ネットワークが導入されるはずである。一方、アルミナ(0001)面小角ねじり粒界には<11-20>方向にらせん転位ネットワークが導入されることがわかっている。今回ヘテロ界面に形成された混合転位ネットワークを構成する転位の転位線方向は<11-20>方向から8.7°だけ<1-100>方向に傾いていることが明らかになった。これは、混合転位ネットワークの傾きと格子定数差から界面のねじり角を決定する手法を確立することに繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、転位へのドーパント偏析メカニズムを解明することおよびこれを応用した材料設計についての知見を得ることを目的とする。現在までに刃状転位へのドーパント偏析についてはイオンサイズ効果および転位コアとの電気的相互作用が最も重要な因子であること、およびらせん転位へのドーパント偏析についてはドーパントとその周囲のアニオンとの間の結合状態の変化が重要な因子である可能性を見出した。今後、種々の物性を有するナノ細線構造をデザインするうえで上記のような知見は非常に有用であり、研究初年度の達成度としては順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
静水圧場をもたないらせん転位まわりのドーパント偏析メカニズムをさらに詳しく理解するために、アルミナc面小角粒界に種々のドーパントを添加し、偏析挙動のドーパント種依存性(イオンサイズ効果、電荷効果)を検討する。 また、アルミナa面粒界をバイクリスタル法により作製し、この界面に導入される複数種類のらせん転位まわりのドーパント偏析分布を観察することで、偏析挙動のバーガースベクトル依存性を検討する。一方、ルビー/サファイア(0001)面ヘテロ界面に導入される転位は拡張していることが明らかになった。これは微小量のCr元素が転位まわりに偏析することで積層欠陥エネルギーが大幅に低下した可能性を示唆するものである。この現象についてさらに詳しく調査するために、作製した界面におけるCr元素の分布をHAADF-STEM法により詳細に解析するとともに、第一原理計算によるアルミナ(0001)面積層欠陥エネルギーにおける不純物効果について検討する予定である。
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Research Products
(4 results)