2012 Fiscal Year Annual Research Report
非線形な情報統合を行う顕著度マップの神経回路モデル構築とその機能の解明
Project/Area Number |
12J06884
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 康彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ネットワークモデル / 高次発火相関 |
Research Abstract |
本研究では,生理学的知見を説明する顕著度マップの神経回路モデルの構築を行う.具体的には,視覚情報が統合され顕著度マップが存在することが強く示唆されている頭頂間溝外側皮質(Lateral Intra Parietal cortex, LIP)をターゲットとした顕著度マップの神経回路モデルが提案する.HPネットワークモデル構築における過程において,従来から考慮されているニューロン集団の平均的な発火回数(発火率)だけでなく,ニューロン間の相関,特に2つのニューロン間だけでなく,3つ以上のニューロン間の高次相関が及ぼす影響に注目が集まっている.私は,この高次発火相関が脳内ネットワークに及ぼす影響を,高次発火相関構造とネットワークにおける各ニューロン間の結合構造と対応させることで,研究する着想を得た.そこで本年度は高次発火相関の生じるHPネットワークモデルの構築を行い,ネットワーク構造と高次発火相関構造間の関係を理論研究した.具体的には,LIP野では層を経由する過程でニューロン間の相互作用によって徐々に計算処理され,顕著度マップを出力しているため(Noudoost et al. 2010),私は入力層および出力層の2層のHPネットワークモデルを構築した.このネットワークモデルにおいて,各ニューロンのコードしている最適方位の似ているニューロン同士は強く結合させ,直交しているニューロン同士は弱結合させる構造を取り入れた(KOetaL2O11).この結果,スパイク発火の非線形作用によって生じた高次発火相関構造が変化し,ある種のフィルターの役割を高次発火相関が行うことが分かった.つまり,高次発火相関によって,ランダム刺激や最適方位に直交した線分刺激を与えた時には同期非発火(スパースな発火)を促し,最適方位と同一の線分刺激を与えた時には同期発火を促すことが分かった.これらの結果から,高次発火相関の情報符号化への影響が強く示唆された.本研究は多数の国際学会や国内学会で発表済みである(Igarashi & Okada, COSyNe 2013).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次発火相関構造によってスパースに発火するネットワークモデルを構築し,国内研究会において議論を重ねるとともに(包括脳2012年6月,冬のワークショップ2013年1月),その研究成果を国内学会(日本神経回路学会2012年9月,物理学会2013春,日本神経科学会2013年6月)や国際学会(CoSyNe2013年2月)において発表を行った.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,複数の特徴量を入力としたサブネットワーク構造による,記憶できる物体数への影響について研究し,脳内における高次発火相関やスパースな発火特性の機能的利点を解明する.
|
Research Products
(13 results)