2013 Fiscal Year Annual Research Report
動学パネルモデルにおける推定の高次漸近的効率性とセミパラメトリック効率性
Project/Area Number |
12J06892
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩倉 相雄 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | パネルデータモデル / 推定量の効率性 / 相互効果 / 因子分析 / 二重漸近理論 |
Research Abstract |
計量経済モデルの推定を考えるとき、推定量の漸近分布を導出するだけでなく、その効率性(漸近分散の最小性)を評価することも重要な研究課題である。近年のパネルデータ分析では、時系列の標本数も大きくする状態で様々な推定量の漸近分布が求められているが、効率性に関する研究は、その重要性にも関わらず、ほとんどされていない。そこで、本研究では、実証上重要と考えられる様々なパネルモデルを取り上げ、推定の効率性について分析を行った。本年度では、相互効果の入った動学パネルモデル(パネル自己回帰モデルを含む)を考え、共通母数の推定量の漸近分散の下限(効率性限界)を導出するとともに、それを用いて様々な既存推定量の効率性を評価するという研究を行った。より具体的には、パネルデータが定常ガウス過程に従う誤差と相互効果との和として表現されるモデルを考え、ガウス定常過程の自己共分散構造を決める有限次元母数の推定の効率性について分析を行った。特に、Okui (2010)が提案するバイアス修正済みグループ内標本自己共分散が漸近的効率性を持つための必要十分条件を与えた。具体的には、個人の動学が次数(p ; q)のARMA過程に従う場合、自己共分散の次数がp-q以下であるとき、またそのときに限り、Okui (2010)の推定量が効率性を持つことを明らかにした。本年度に取り扱ったモデルは、マクロ経済分析で近年注目を浴びている因子分析モデルとみなすこともできる。そこで、因子や因子負荷量の推定の効率性限界も導出した。その結果から、主成分分析推定量が、(1)因子負荷量を効率的に推定すること、(2)誤差項が時系列方向に無相関の場合には、因子をも効率的に推定することを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度にも報告しだ通り、本研究では、効率性限界の導出に際しHahn and Kursteiner (2002)の手法を土台にする予定であったが、研究を進めるうちに彼らの手法には問題点があることが分かってきた。そこで、Hahn and Kuersteiner (2002)の問題点を克服する手法を提示した。その手法はそれ自体が重要であるだけでなく、今後の研究の基礎になるものであり、研究計画は順調に進んでいると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、推定量の漸近分散の下限を導出することを目的としてきた。今後は、下限の導出だけでなく、それを達成する推定量を構築することに主眼をおいて研究を行う予定である。パネルモデルにおいて時系列の標本数も大きくする場合、時系列モデルの場合と似た漸近的結果が成立すると予想されるため、時系列の既存研究を参照しながら研究を進めていくことになる。ただ、時系列分析と異なり、(1)二重漸近論を扱うこと、(2)個別効果や時間効果などの付随母数が存在することから、時系列の場合より複雑な数学的取扱いが必要となる。それらの点に関してはこれまでの経験によるスキルの蓄積により克服できると考えている。
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Research Products
(2 results)