2012 Fiscal Year Annual Research Report
精密酵素重合法を用いた新規分岐性ポリペプチドの合成と組織再生への応用
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12J06954
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
新田 祥子 独立行政法人理化学研究所, バイオマス工学研究プログラム, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポリペプチド / 酵素触媒重合 / プロテアーゼ |
Research Abstract |
ポリペプチドは我々生体を構成する因子であり、いわば究極的な生体適合性材料であることから、バイオマテリアルとして大変有用である。本研究では精密酵素重合法を用いてポリペプチドを合成することで、安全性だけではなく機能性の面にも配慮した材料作りを目指した。 まず、疎水性ペプチド塩酸塩(L-lycine ethylester hydrochloride, L-phenylalanine ethylester hydrochloride等)を脱塩した後、プロテアーゼ存在下、55℃で約1日間反応させることで、重合度5~10程度のオリゴペプチドを得ることができた。この時、化学構造および分子量はNMR、MALDI-TOFMSおよびGPCを用いて評価した。種々のプロテアーゼ(papain、bromelain、trypsin、α-chymotrypsin等)を用いて酵素スクリーニングを行ったところ、酵素種によって得られるオリゴマーの収率および分子量に差異が見られた。また、脱塩化ペプチドを用いることで、バルク条件下や有機溶媒中でも重合反応が進行することが見出された。これらの結果より、反応系pHの変化に伴う酵素触媒の不活性化が生じないため、以後のポリペプチドの高分子量化が期待された。 次にtriolやtriamine存在下でL-lycine ethylesterの重合反応を行ったところ、分岐構造を有するoligo(L-lycine)を得ることができた。この手法をL-alanineといったペプチドに適用させることで、直鎖型ポリペプチドとは異なる物性を有する自己組織体形成の可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペプチドをモノマーとした酵素触媒重合に関して、オリゴマーレベルの重合物が得られているだけではなく、酵素スクリーニングや反応条件の最適化に関して十分な知見が得られたため。また、分岐型ポリペプチド合成に関する基礎データを得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ペプチドの酵素触媒重合に関して得られた知見を元に、分岐型ポリペプチドの合成に注力する。特に親水性部・疎水性部からなる両親媒性分岐ポリペプチドを合成し、ポリペプチドの自己組織化を活かしてミセル化やゲル化について検討する。ここで、両親媒性化合物の合成に関し、親水性ポリペプチドと疎水性ポリペプチドの相溶性が問題となってくることが考えられるため、適当な反応条件(特に反応溶媒や酵素触媒)を選択する必要が有ると考えられる。さらに、得られるポリペプチドの自己組織化に関し、ペプチド種や分子量等によって得られる構造体の形態が変化することが期待できるため、電子顕微鏡や動的粘弾性測定など様々な分析方法を用いて解析を行う。
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