2012 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル解析によるシングルスピン非対称の統一的解明
Project/Area Number |
12J06959
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
金沢 功一 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 摂動論的量子色力学 / シングルスピン非対称 / 高次ツイスト |
Research Abstract |
現在、RHICで進行している偏極陽子衝突実験では、様々な終状態粒子についてのシングルスピン非対称(SSA)の測定実験・解析が進行している。RHICで観測されている大きなSSAは、これまで高エネルギー過程の記述に成功してきたパートン模型によっては説明できないため、パートン描像を超えるハドロンの構造を直接反映した興味深い現象として注目されている。 近年、RHICから光子やジェット生成過程についてのデータが報告され始めており、これらは終状態ハドロンへの破砕の効果を含まないため、SSAの起源の解明に重要な役割を果たす。本年度の研究では、横偏極核子中のツイスト3クォーク・グルオン相関効果に着目し、中間子生成過程で決めた相関関数を用いて、RHICの運動学的領域におけるこれらのスピン非対称の数値評価を行った。その結果、直接光子のSSAは非常に大きく中間子生成のものとは異なる振る舞いをすること、シングルジェットのSSAの振る舞いは中間子と良く似ていること、などが分かった。これらの予言とデータとの比較により、クォーク・グルオン相関効果に対する新たな知見が得られると期待される。 また、中間子生成過程のSSAに対するツイスト3破砕関数の寄与についての研究を行った。本研究では、量子色力学のWard高橋恒等式を用いて、この寄与が、明確にカラーゲージ不変な形に因子化されうる事をFeynmanゲージにおいて示し、collinear因子化の枠組みでツイスト3断面積を求める定式化を確立した。そして、この手法を、必要なダイアグラムの数が少なく、計算が比較的簡単な半包含深非弾性散乱過程に適用し、スピン依存断面積に対するツイスト3破砕関数の寄与を摂動論的量子色力学の最低次数で導出した。この理論公式と、RHICの後続の計画であるEIC実験との比較によって、ツイスト3破砕関数の情報を得られるものと期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ツイスト3破砕関数の寄与についての定式化を完成させ、半包含深非弾性散乱過程の断面積を導出できている。また、平成24年度中に行う予定であった陽子陽子衝突過程の計算はまだ途中であるが、計算手法等は自明であり、近いうちに完了できると思われる。そのため、計画はおおむね達成されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、陽子陽子衝突過程のスピン依存断面積を導出した後、シングルスピン非対称の実験データをグローバル解析するための計算コードを整備する。RHIC実験での陽子陽子衝突過程とHERMES実験・COMPASS実験での電子陽子衝突過程を含めたグローバル解析を実行する。
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